教育・人材育成

キャリア教育にジェンダー問題を取り入れる意義を考える

2021年度も北九州市立大学のキャリア・デザインの講義(15コマ)を、眞鍋先生と二人三脚で担当しています。昨年にコロナによりオンデマンド化(収録した動画を見てもらう)し、受講生約300名ほどいる講義なので、今年度もオンデマンドです。

オンデマンドは非常に効果が高く、学生が1人1人画面(PCなりタブレットなり)に張り付き聴いてくれるため、「レポートの質が高い」という結果のため今年度もオンデマンドにしました。

ジェンダー問題で1コマ分の講義を実施

2021年度のこれまで7回分の講義のテーマはこんな感じです。

①ガイダンス

②なぜキャリアを考えるのか?

③未来のスキル?正解のない問題の学び方

④“日本株式会社”の働き方は過去のもの?

⑤データで知ろう!日本の盛衰

⑥ジェンダーギャップに気を付けろ

⑦テクノロジーの進化

そして②~⑦は毎回テーマを提示してレポートを書いてもらっています。

①~③は総論的な内容で、未来予測がより複雑化し、テクノロジーの進化も早く、正解がわからない時代になるので「学び続けよう!」がメッセージでした。

④・⑤は今の日本の現状を、いろんなデータを紹介しながら知ってもらい、とくに人口減少、さらには生産労働人口によって産業構造から働き方まで、まだまだ変化することを学んでいきます。そして多くの組織で「意思決定層」が高齢化し、しかも男性であることで「組織のスピード」も遅くなって柔軟性を失っている現実を知ってもらいます。

その次に⑥の「ジェンダーギャップ」について、こちらもいろんなデータを紹介しながら学んでいきます。②から始まり、④・⑤で「うわ、日本大丈夫かいな・・・」と不安な気持ちになったところで、⑥で「ガーン・・・」というショックな数字をたくさん紹介します。とくに女子学生にとっては、腹立たしくもあり、悲しくもあったと本当に思います。

ちなみに、昨年度分のキャリア・デザインの「ジェンダー問題」回の一部を、Youtubeで公開しております。(2021年度は少しバージョンアップしています)

●2020年度-前期 キャリアデザイン「働き方と組織の課題“ジェンダー編”」

●2020年度-前期 キャリアデザイン「働き方と組織の課題“ジェンダー編”」のレポートふりかえり

2021年度のキャリアデザイン「ジェンダー問題」のレポート

今回のキャリアデザイン・オンデマンド授業「ジェンダー問題」の前半動画ではジェンダーギャップ指数を皮切りに、男性と女性とで生涯賃金にどれくらいの差があり、結婚・出産等のタイミングで会社を辞めるとどんな影響があり、そもそも日本の多くの企業ではどれくらい給与に男女差があるのか?そしてそれらは、どんな価値観や文化や制度から来るのか?について解説。

そして後半動画では、「ジェンダー問題」が結局社会や経済の何に影響を与えるのか?現代の日本の現在地はどこなのか?企業がジェンダー問題に向き合わないとどうなるのか?就活では企業のどんな点を見れば“それら”がわかるのか?などについて解説していきました。

上記の画像は、それをもって学生たちに書いてもらうレポートのテーマです。

これらの内容を聞いて、レポートというよりも素直に思ったことを言語化してほしいと伝え、提出してもらったレポートを一部紹介したいと思います。

正直、今回の講義は分かっていても辛い現実でした。後半では今女性への対応もよくなってきているということでしたので、少しは将来に希望が持てる気がしました。ポイントとして、企業の人事の方の話だけを聞くのではなくより多くの人から話を聞く。ということだったので、参考にしようと思いました。また、結婚の話もでてきましたが、はっきりいって今の日本の実情のままだと結婚したいとは思えません。結婚をして、旦那さんのことも考えて、子育てのことも考えて、家計のことも話しあって、、、、となると考えただけでも億劫ですし、何より子供を持つ時期さえ考えなければならないのは本当に大変です。日本が少子化に向かっているのはこのような日本の情勢が深く関係していると思います。私は今回の講義で、将来どうしていくべきか本気で考えなければならないと感じてきました。これからも、記事などに注目していきたいと思います。

「仕事、ばりばりやりたい!」「結婚、もちろんしたい!」「子ども、ふたりほしい!」と思い続けながらも、きっと何かはあきらめないといけないだろうと思いながら、自分の将来の強みを作って進化させるためにここへ入学してこの授業を履修した私にとって、前半の講義は「やっぱりそうだよねぇ…」と思う内容でした。私の目には、明らかに今の時代は男性社会。女性は結婚して子ども生んで仕事辞めて家事に専念しとけ!と言わんばかりの風潮があるように見えています。残念だなと思うと同時に、学生である今はまだ大丈夫でも社会に出たら生きにくくなるなぁと思いました。しかし、後半の内容は、仕事したい結婚したい子どもも欲しいと願望に溢れる私には、まるで希望の光が差し込んできたかのようでした(本気です)。私はあまり海外に憧れや関心がなく、何なら海外には極力行きたくないと思っているような人間なので、日本の優秀な人材が海外へ行くというのは個人的には好都合だと感じましたが、海外への人材流出を食い止めるような企業が多く出てくれば、岩永先生の時代とはまた背景が違う就職氷河期がやってきてしまうのではないかと不安になりました。結局は自分があらゆる場面でどんな決断を下すかによって、置かれる状況は変わると思います。今のうちにたくさんの経験を積んで様々な知識を得て、決断を下すべき場所で多くの選択肢を選べるようになりたいなと思いました。仕事も結婚も子育ても諦めなくていいように頑張ります。ご教示いただきありがとうございました。

今回の講義で、将来のキャリアにおいてジェンダーが想像していたよりも深く関わっていることを感じました。そして、先生がおっしゃっていたようにダイバーシティ&インクルージョンを掲げている企業を選ぶことだけでなく、実際に企業に勤める社員の方々にも話を聞くことが重要だと思いました。最近は、ジェンダーギャップをなくすための取り組みも増えてきていますが、そう簡単には変わることができないはずです。したがって、社会の変化にいかに柔軟に対応でき、取り組みが早いかということは企業を選ぶうえでカギとなると思うので意識していきたいです。また、日常生活を送る中で無意識のうちに男尊女卑の考えが含まれている言葉や社会の制度を受け入れていることが多いのではないかと考えました。今まで当たり前に感じていたことをもう一度ジェンダーの視点から考えなおしていこうと思いました。

今回の講義を受けて、まず就職すること自体とても簡単なことじゃないのに、就職先がジェンダーギャップに対応しているのかもきちんと見なければいけないということに失望感のようなものを抱きました。仕事をしてお金をもらって生きていかなければいけないのに、日本は生きづらい国だと思いました。仮に、就職できたとしても、女性を蔑視するような環境だったら毎日働くのがつらくなるし、会社に貢献しようという気持ちもなくなると思いました。このような状況になるなら語学といった海外に通じるスキルを磨いて、女性を快く受け入れる社会体制が整っている国に行った方がましだと思いました。

私はこのキャリアデザインの講義6回目にして、キャリアデザインは就職や昇進とか働き方とか企業とかそっち方面のことだけではなく結婚、育児、などについてどんな人とどう過ごしていくかを考えることも含んでいるということを思い出しました。勝手にキャリアという言葉から仕事の方ばかりを考えていましたが、今回ジェンダーギャップについて会社選びだけでなくパートナー選びも重要になってくると気づきキャリアデザインの講義によってパートナーや家庭についてももっともっと学んで行き、将来幸せな生活を送れるような計画を立てたいと思いました。前回の講義にもあったように、古い考え方にとらわれて新しいことを導入しようとしない会社は今後成長しないというようにジェンダーギャップについての知識がまだまだ浸透していない企業や新しい制度を取り入れようとしない企業は大きくならないと思いました。だから将来その真逆の、みんながジェンダーギャップについて知っていてそれを対策していこうと独自の制度を作るような会社に入れるように今回の講義内容は忘れずに覚えておこうと思います。

自分も男女共同参画の分野の仕事をしてきて10年経ったけども、社会に対してまだまだやれてないことあるなーという気持ちもあり、社会人になってジェンダーギャップにぶちあたる人が多いというのを見てきたこともあり、熱が入っていたと思います。

約300名近い学生たちのレポートを全文読んで、テーマを提示した身としては、真剣にみんな聞いてくれていたことがわかるし、多くの文章から「怒り・悲しみ・不安・焦燥・失望・わずかな期待」が読み取れます。それとともに、ふつふつと「このテーマをもっと多くのまだ社会に出ていない若者たちに届けたい」と思いました。

自分が「働く」、ある意味「人生の時間」を仕事として授ける企業が、ジェンダーギャップがひどかったらどうするか?そうならないためにも、多くの大学生が「この視点」を学んでおくことで、企業は選ばれる側になる。そして、ジェンダーギャップがひどい企業ほど、人材が集まらずに淘汰されていく。

大学生たちは投資家と同じ目線で、その企業の「期待値」を見れる視点を養ってほしいと改めて感じました。

日本の多くの大学ではキャリア教育が行われたり、キャリアに関する講義もありますが、その講師が男性だった場合、きっとそこに「ジェンダー問題」は存在しないでしょう。女性が講師だったとしても、どうやらコミュニケーションや就活のことの話が多いみたいです。

北九州市立大学でもキャリア・デザインの講義だけです。これ以外にも、大学や高校などでキャリア教育にジェンダー問題を取り入れたいと相談があったら、なるべく乗っかって、未来のある若者たちへ伝えていきたいと思いました。



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