2018年現在、どれほどの中学生・高校生が「イノベーション」という言葉を知っているだろう?2018年6月24日(日)、福岡市科学館で2018年度の夢チャレンジ大学・体験プレ講座が開催された。約1週間前にチラシが福岡市内の全中学校に配布され、ホームページが立ち上がったばかりで、参加申込不要だったのでドキドキしながら会場で待っていた。当日参加したのは、中学1年生から高校2年生までの19人も来てくれた。
2012年当初より、この夢チャレンジ大学を一緒につくってきている福岡大学・商学部の田村馨教授が19人の中高生たちに「イノベーションという言葉を知っている人?」と問いかける。手を挙げたのは19人中、2人だった。
中高生・夢チャレンジ大学とは?
福岡市と企業・NPO・学校が一体になり、高校生・中学生を対象に、福岡で夢にチャレンジし続ける大人たちを先生に迎え、自らの感性を磨き、創造力を発掘する学びの場を提供する「次世代の人材づくりプロジェクト」です。
行政が行う異例の教育プログラム
本来、国・自治体の縦割り行政で「義務教育」の仕組みがあり、基本的には教育委員会の管轄の中で小学校~高校の教育方針が決まる。そして長らく続いている日本の大学受験システムをゴールとしたような、高校の教科、高校受験、中学の教科、中学受験、の形が出来上がっている。人口増・高度経済成長期・右肩上がりの大量生産&大量消費の工業化社会では、新卒一斉採用&終身雇用の会社システムからはじまる中学受験までの流れは多くの日本人に「当たり前の常識」として沁みついている。
この中で、中学生や高校生が周りを「出し抜く」には、お金を払って塾に行ったり、私学に行ったりする層が出てくる。そしてそれは民間が受け皿となってきた。わざわざ、福岡市がこの中学生・高校生に対して2012年から始めた教育プログラムはいったい何なのか?
当初の福岡市から持ち掛けられた課題は「中高生たちの自己肯定感がとても低い」「将来の福岡を背負いリーダーとなれるような人材の育成」。ただ、この2つの課題の“対象となる中高生”は一緒ではないため、アプローチ方法も違う。そこで、2012年より毎年のプログラムで試行錯誤も続けながら精度を上げ、さらに年々と社会情勢が変わっていき、2018年度のテーマが「イノベーション人材の育成」となった。
2018年現在、日本企業が求める人材は「イノベーション人材」だ。ただ、どんな人材なのかを知っている管理職も労働者も少ないし、大学生も知るすべは限られており、日本の教育業界ではなおさらに少ない。それが今回19人中、2人しか手が挙がらなかった理由だろう(それでも知っていた2人は、けっこうすごい)。
ではなぜ、福岡市はこの「イノベーション人材の育成」にアプローチするのか?他の自治体ではこのようなプログラムはほぼない。あっても、海外の大学から先生や学生を呼んでの1Dayワークショップを「民間」がやっている事例。スタートアップ都市宣言をして、アジア・世界を見ている福岡市だからこそ、2012年から続くこの事業を大切にしてきている理由なのだろうと思う。
福岡テンジン大学もプログラム開発で共働
2012年、福岡市と西日本新聞社と一緒に立ち上げたこの事業を、どのように構築し、ゴールを設定し、成果を上げるために何をするか?の議論を始めた。すぐに学識者の必要性を感じ、福岡大学の田村先生に参画いただいたらどうかと僕から提案。田村先生は快く参画してくださり今に至る。
2012年当初より、事業の全体設計や講座企画・運営、広報チラシやホームページなど(毎年、役割を少しずつ変えたりしながら)、僕や福岡テンジン大学のスタッフたちでつくってきた。ほとんど表には出なかったけど、福岡テンジン大学をつくって、そこで繋がった縁がこのように活きたことが非常に嬉しい。
第一期生である2012年度に参加した中学生・高校生も、もう6年経ったので早い子はもう社会人になっている。一期生から六期生までいて、当時中高生だった子が大学に進学、すると僕が北九州市立大学や九州産業大学で講師をしていると、そこの教え子になるという事案も発生。さらに高校生のときから福岡テンジン大学のボランティアスタッフにもなったりする子が出てくる。
高校生から夢チャレに参加したり、福岡テンジン大学の大人たちと接触し、社会に出ていく子たちは、これからどのように成長していくのか?彼ら・彼女らの30歳が本当に楽しみで仕方ない!
2018年の今年は、どのような中高生と出会えるか、非常に楽しみだ!