教育・人材育成

キャリア教育にジェンダーギャップ問題を盛り込む意義

2020年度、北九州市立大学のキャリアデザイン授業は約300名ほどが受講しているオンデマンド授業です。日本全国の高校・大学で、「これからのキャリアを自分自身で考え、選択し、築いていけるように」とキャリア教育系の取り組みや授業が導入されているようです。

昨年度のキャリアデザインでも、日本において「女性が社会に出たとき」のいろんな落とし穴や盲点の話はしたのですが、メインテーマとして1講義分扱ったわけではなかったです。しかし、今年度はオンデマンド授業になり、ほとんどの学生が「PCなりスマホの画面に集中して聞いてくれる」ことが、毎回課すレポートの質が全体的に高いことから、「日本のジェンダーギャップ問題」から来る「働き方」や「企業組織」についてメインでやってみました。

結論から言うと、キャリア教育に「ジェンダーギャップ」を扱うことの意義を非常に感じました。これ、絶対必要だと思います。さらに言うと、現代だからこそ「男性からこのテーマの話をする」ということの意味も強く感じました。

「ジェンダー×働き方」の話を聞いて素直な感想をください

講義のレポートとは別に、「ジェンダー×働き方」の話を聞いて、素直な感想をください、と学生たちに書いてもらった内容が、このテーマを扱う意義がひしひしと伝わるのではないか、といくつか紹介したいと思います。(もちろん全て匿名です)

 やはり、育児をすることによって自身のキャリア上で不利な扱いを受けることになるならば、育児をすることなく、すなわち子どもを産み育てることをしたくない。現状家庭に自身の子どもがおり、自分が高い役職に就いているということは、自身は子どもより仕事を優先し、そのカバーを家族に任せているということになるだろうと今回の講義資料を読んで感じた。しかしそうしたジェンダー間のギャップに違和感を感じている人もいる。お互いのどちらかが自身のキャリアを犠牲にしなければ子育てができない現状を変えるには、日本社会全体の意識が変わらなければならず、それには多くの時間と労力が要求されるだろう。

 企業の管理職を占める女性の割合が高い企業ほど売り上げが高いということが印象に残りました。そしてその事実を様々な角度から証明する統計やリサーチが多いと思いました。それでも日本の企業に改善が見られないのは数字を通して事実を見ていないからなのか、それとも見て見ぬふりをしているのかが疑問です。また、冒頭に出たジェンダーギャップ指数で日本は先進国の中で断トツの最下位ですが、順位の近いアラブ諸国は数値を伸ばしています。サウジアラビアでは経済の停滞を改善するために女性が労働しやすい環境を作ったり自動車の運転を解禁するなどの権利拡大を行ったりしています。日本だけが国際社会に置いて行かれているような気がします。女性の社会進出と男性の育児協力が進めば経済が良くなり少子化問題も解決する可能性があるのになぜ踏み出せないのか疑問です。

 管理職の割合がほぼ男性を占めていたり、会社のトップが古典的な考えを持っていたりすると、今の時代でも女性の存在価値を下げられてしまう。自分も女性という立場だからこそ、講義内でもあったように、女性管理職の充実度や女性の活躍という視点で企業を見ることで、その企業で働いていけるか、自分のキャリアアップを望めるかを判断するのにもにつながるだろう。そして、女性社員の結婚・妊娠・出産の際に、女性の肩身が狭くならないような配慮、支援が充実していることも重要だと考える。時代の変遷によって、私たちに求められる能力が移り変わるように、企業も環境や体制をどんどんバージョンアップさせなければ生き残っていけないということを強く感じた。

 今回の講義を通して一番考えたのは女性の仕事と家庭の両立の課題についてです。これは以前から思っていたことでもあるのですが、女性が出産子育てで一度仕事を離れることによるキャリアへのリスクが大きすぎると思います。講義の中の生涯賃金の差もこれほどかというくらい大きな差があって驚きました。ショックな数字でした。出産というだけでも大変なのに子育てまで女性の役割というイメージになりがちなのは本当によくないと思います。男性の育休がもっと普及するといいです。また、せっかく今まで頑張って就職できたとしても、結婚や出産で人生の早い段階のうちにキャリアが寸断されてしまうのはせっかく今まで積み上げてきたものが振り出しに戻ってしまいそうで不安に感じました。

 育児休暇から復帰した男性が、嫌がらせの転勤をさせられた話を聞いて、正直今の時代にもそんなことをする企業があるのかと驚きました。キャリアデザインの授業を受けてきて、育児への配慮がない企業も多少はあるだろうなと考えていたけれど、そこまでの配慮のなさは想定外で、就職の際に育児に理解のある企業をきちんと見極めなければならないと今までよりも強く思いました。また、私自身ももし出産をすることになった場合のことをまだあまり考えていなかったので、38年働き続ける場合と、出産後退職の場合の生涯賃金の違いを知ることができ、考える材料になりました。

 ジェンダーの話を聞いていて、耳が痛かったというのが正直なところでした。僕はもちろん結婚もしてないし、企業で働いていませんが、今まで生きていた中で、知らず知らずのうちに自分の中にバイアスのようなものがあった気がします。こういった無意識のバイアスも性別の格差につながっているかもしれないと思うと、少し胸が痛いです。こういった無意識に根付いた感覚はいつまで尾を引くのか少し不安になります。また、女性が活躍できる企業や国家の成長率が高いという話を聞いて、自分が就職する際にも大いに参考にしていきたいと思います。

本当にいろんな感想・意見をもらいました。今回のキャリアデザインの「ジェンダー×働き方」では、「女性の生涯賃金が、結婚・出産で辞めるか、育休とるか、専業主婦なるで大きく変わる」ことや、「女性の管理職が多い企業の方が成長する」というデータ、「女性の役員がいるかいないかで企業の業績が変わる」というデータ、「世界のジェンダーギャップ指数で日本が先進国で断トツ低い」こと、さらにそんな日本でも「福岡県の男性は家事・育児のしない度が都道府県ランキングでワースト3」などを紹介。

それをもとに、今後学生たちが直面するの就職活動のときに、「企業を見る視点」が新たに加わり、自分自身が良いと思うキャリアをデザインしやすくする(選択肢を持てる)のでは、と話しました。

中にはこんな感想もありました。

 私は、女性の活躍の場を提供しようとしてくれる人が少なくともいる時代に社会に出れると考えると、恵まれているなと感じました。今回の講義を受けて、まだまだ日本は世界の他の国々と比べるとジェンダーギャップがあることが改めてよくわかりました。しかし、少し前までは今よりひどい状況でした。今では女性の活躍を重んじる企業が増えてきているので良かったとな思いました。しかし、その環境に甘えすぎず将来もっと女性の活躍を重じてもらえるよう、社会に出たときに頑張ろうと思いました。

多くの学生が憤りに近い感情を垣間見せる中、超前向き(笑)、超ポジティブ(笑)。良いと思います!

 私は将来結婚して子供産んで子供が小さいうちはなるべく一緒に過ごす時間を取ってあげたいなとも思う一方で,バリバリ仕事して男性と変わらない収入を得て社会的な繋がりを保っていたいとも考えます。自分がどのような働きかたをしているのかやパートナーの考え方など具体的にわからないのでまだ全然決まっていませんが,多様な働き方が選択できればいいなと思いました。今の会社を辞めたくないという人には女性も男性も育休が取りやすいというだけでなく,一旦辞めたいと考える人には転職市場が賑わっていたりフリーランスの需要が高まっている社会になっていてほしいです。仕事だったり家族だったり趣味だったりと,個人が大切なことだと考えるものに重きを置ける選択ができるような仕組みであればいいなと思いました。

僕自身も福岡HUBのリーダーを務めている、フリーランス協会のビジョンが「誰もが自律的なキャリアを築ける世の中へ」です。選択肢があることもそうですが、自律的というのがポイントです。そこに男女の差はない方が良いと思っています。

最後に・・・

これからSDGsである2030年に向けて、日本の最大の課題は5番の「ジェンダー」だと言われています。それは社会的な意味合いだけではなく、経済的な意味合いも強いからです。

日本ではジェンダー問題をマスコミはほとんど取り上げないので、知らない人が多いのですが・・・「女性活躍により日本のGDPはまだまだ大きく伸びる」という調査・分析が国際機関等から発表されてるのです。

・IMFは2012年に、「日本が女性の労働参加率を北欧並みに引き上げられたら、GDPのベースラインを8%上げられる(約40兆円上乗せ」」

・OECDは2012年に、「日本の女性の労働参加率が男性並みになれば、2030年まで労働人口はほとんど減少しない」「労働参加率の男女格差をなくせば、今後20年で、日本のGDPは約20%近く増加」

・ゴールドマンサックスは2014年に、「日本女性の就業率が男性並みに上昇すれば、最大でGDPは13%上昇する」

・マッキンゼーは2015年に、「女性活躍により労働生産性が高まれば、2025年までに毎年3%の経済成長が可能」

経営者が変わらないなら市場原理で退場してもらうしかない?

withコロナとは言え、日本は深刻な人手不足にこれからまだまだ突入していきます。大企業よりも中小企業、都会より地方の方が、その情報発信量の少なさから、より格差は広がることでしょう。

地方の中小企業が、とくに若い人材に振り向いて欲しかったら、選択肢はかなり限られると思います。これからの未来ある人材にとって、「働きやすさ」「暮らしやすさ」「人生の充実度」を打ち出せる経営にシフトできるかどうかです。

今いる既存の社員の方々で、50歳を過ぎると「親の介護問題」が一気に増えます。日本は団塊世代が後期高齢者となる2025年前後より、あちこちで「施設足りない・介護人材足りない問題」が凄まじいことになると予測されています。これまでは「女性の育児」で、働き方に格差が出ていましたが、男女も役職も関係なく、親の「介護問題」が経営に直撃することになるでしょう。

そのとき、柔軟性のない働き方しか用意できない企業は、選ばれずに市場から退場するしかないのだと思います。という意味でも、若い人は企業選びで経営体質のことをよく見ましょう!



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