教育・人材育成

未来の教室を考える~これからの教育はどうなっていくのか?~

すでに大人になり社会に出ている人に聞いてみたい。小学校・中学校・高校と、どれほど「自分で、自分たちで、学校のことや未来のことを考える機会があったか?」。1981年生まれで、まだまだインターネットも出現せず、マスコミによる統一された情報が大量発信されていた時代に、幼少期を過ごしていた。父親から殴られることは仕方ないし、学校の先生、ましてや部活の先生に殴られることは「仕方のないこと」だと思っていた。

 

なぜなら、それしか知らないから。知らないと一部の人をのぞいて「疑問に考える」ことがない。与えられたモノ・言葉・機会・ルール、その中の社会だけを生きてきた。それが当たり前として価値観のモノサシになってしまう。大人になった今だからこそ、価値観は多様で、前後左右360°いろんな角度にいろんな人がいて、世界を見渡せばそれは平面の2次元ではなく、3次元の空間に無数に価値観があることを知る。

 

未来の教室を考える2018 in 福岡

2018年7月1日(日)、福岡市中央区の今泉にある、AI×ビジネスの分野で福岡のITシーンをどんどん牽引している企業“グルーヴノーツ”内にて、「未来の教室を考える」が開催された。

 

プログラム&登壇者は

①Session Ⅰ「日本の(公)教育のミライ」(10:00-12:00)

浅野 大介 氏(経済産業省 教育サービス産業室 室長)
工藤 勇一 氏(千代田区立 麹町中学校 校長)
今村 正治 氏(立命館アジア太平洋大学 副学長)

・モデレーター:
林田 暢明(合同会社TAO、総務省地域力創造アドバイザー)

 

②Session Ⅱ「子供たちは、何を学ぶのか?」(13:00-15:00)

田中 浩也 氏(慶應大学SFC研究所 所長)
園 利一郎 氏(N高等学校・(株)ドワンゴ教育事業本部 副部長)
佐々木 久美子氏(株式会社グルーヴノーツ 代表取締役会長)

・モデレーター:
最首 英裕 氏(株式会社グルーヴノーツ 代表取締役社長)

 

③Session Ⅲ 登壇者全員&会場を巻き込んだクロストーク(15:20-16:40)

上記登壇者に、英進館株式会社より、取締役事業本部長 仲川 泰氏を加えてトーク。

・ファシリテーター:
岩永 真一 氏(福岡テンジン大学 学長)

 

なぜかこれだけの登壇者全員が加わり、かつ参加者たちもトークに加われるクロストークのファシリテーション役になってしまった!

 

もともと、登壇者でもある林田さん&佐々木さんの2人が言い出した「こんなことやりたい」に、「教育と言えば岩永くんじゃね?とりあえずミーティングに呼ぼう」となって、結果こうなった。改めて思うと、この場に巻き込んでもらって本当に良かった。これからの人生がより方向づけられるくらい、濃い時間だった。

 

日本の公教育はこれからどうなる?

セッション①と②の話を受けて、最後のクロストークのファシリテーションをするため、すべての発言と文脈の流れを把握しておかねば!と、自分なりにグラフィックレコードをやって理解促進につとめた。そのセッション①と②のグラフィックはこちら

 

セッション①

 

セッション②

 

中でも、公教育のど真ん中もど真ん中、東京都千代田区の麹町にある中学校で、校長先生を務める工藤さんが提示した「自律」が、この日1日を通してのメインキーワードになったと思っている。それが冒頭でも出したこちらのスライド。

日本全体で教育に参画していくことになる?

今回、登壇者のメンツを見てみると「経済産業省、APU、合同会社、慶應大、N高等学校、株式会社」の人たち。公教育の人は工藤校長だけで、あとはすべて民間企業や私立大学など。文科省もいなければ、国立大学も小中学校などの現場の教諭もいない。

 

とくに経済産業省・教育サービス産業室 室長である浅野さんは、経産省として「未来の教室」という提言を2018年6月に発表したばかりで、これから経産省が「教育」に力を入れていかねば、日本の経済が根幹から崩れる危機感を持っていることを明示している。

 

こちらがその提言で、これからの日本の教育の現状・課題、そして世界とのギャップが凝縮していて、教育関係者として、親として、一見の価値あり。

経済産業省:「未来の教室」と EdTech 研究会 第1次提言 (PDF)

 

誰かが言っていた。これから人口も減り、若者も減り、大学のない自治体は「高校生にまちづくりを委ねないといけなくなる」。現に、今年7月に発生した西日本豪雨災害の被災地に一番すぐに駆け付けられてボランティアができていたのは地元の高校生たちだ。今後、この高校生たちもジワジワと来る少子化と、都心部への人の流れで頼れなくなる。

 

じゃあ、このような複雑かつ多様な問題が絡み合った課題は、いったい誰が解決してくれるのか?そこに学びの要素、教育の要素、人材育成の要素がたくさんある。経産省は「日本は課題先進国だ。だけど課題解決先進国ではない」と言っている。

 

これから日本は、教室の中だけで教育することを放棄しないといけなくなる。家庭も、1つの家族、親たちだけで子育て&教育することから解放されるべきだ。本来、人類は集団で子育てしてきた。江戸時代までは養子縁組も当たり前で、地域や町ぐるみで子どもたちを教育してきた。

 

「便利さは後戻りできない」と科学者は言ったが、教育を他者や専門の機関や公教育に任せすぎてしまった結果が今だとすると、後戻りしなくていいから、再構築は必須だという段階にいると思う。これから都心部も地方も様々な課題がもっと増える、それを教育機会として、子どもたちだけでなく大人も一緒に学び続けられる仕組み・文化がこの国には必要だと思った。

 

そんな中、大分県玖珠町から「子どもたちの親、地域の大人たちに、これからの教育について語ってほしい」と講演依頼をいただいた。九州産業大学のビジネス入門で、大学生たちにも講義した「10年後、子どもたちに仕事はあるのか?」をテーマに講演内容を組み立てたが、今回の豪雨で講演会は中止になってしまった。でも、まだまだ「知らない」大人たちが多い地方にこそ、「知ってほしい現実」だと思っているので、呼ばれれば講演でもなんでもいきたいと思った。

 

※追記

経産省が主催で「未来の教室」プラットフォームキックオフイベントの様子がFacebookにアップされているので、そちらをご参照いただければ(3時間もあるんですが)、今後、教育がどんな方向性で変わっていきそうか?が少しは掴めるのではないでしょうか。

「未来の教室」プラットフォームキックオフイベントの動画

 



関連記事

  1. 地域活動と大学教育の最新事例はここまできてる

  2. リーダーシップ開発にはどのような実践が必要か?

  3. 組織や地域・まちの課題解決を仕事にするということ

  4. 地域活性と教育が結びついてきた!

  5. 北九州市立大学・特任教員の任期が終わったので振り返ってみた

  6. ボランティアマネジメントという経験の価値

  7. 事業やプロジェクトの成果を左右するリーダーシップを人材育成に!

  8. 体験の言語化とリフレクション(振り返り)を実践してきてたどり着いたこと…

福岡の歴史絵本をつくりました