2019年度より北九州市立大学にて、キャリアデザインの講義を担当しています。正確には、地域創生学群の眞鍋先生とともに二人三脚でつくる授業。自分がメインの話し手となって登壇し、眞鍋先生が質問やコメントを入れながら学生たちがそれを聞き、手元のスマホから「質問」を投げ、またそれを拾いつつ進める講義スタイルでした。そして最後に正解のない「問い」によるレポートで、思考力と言語化スキルを向上を狙った講義。
これが2020年度、コロナによってオンデマンド授業に移行したことで、学生全員が自分の目の前にあるパソコンやスマホのデバイスに釘付けとなり、集中して話を聞いてくれているのが、レポートによってハッキリとわかります。自分の手間も減った(移動がとくに)し、生産性が数倍な印象なのは、前回の記事でも紹介しました。
そして2020年6月1日、個人的には初めての「オンライン授業」が西南学院大学で始まりました。
ハッキリ言って、「キャリア系の授業」はオフライン授業よりも断然、オンラインないしオンデマンド授業の方が、先生にとっても生徒・学生にとっても良い!!
そう思う理由をちょっとつらつら考えてみます。
教育現場のキャリア教育がズレている可能性?
約20年前に我が国でキャリア教育が提唱されてから、約10年前には小中高にも職業体験をはじめとるすキャリア教育、進路指導のその先にある職業や働き方のキャリア教育などが広がったようです。(残念ながら20年前に高校を卒業した自分はその影響を全く受けていません)
しかしながら、小中高、とくに中等教育におけるキャリア教育はけっこうズレているのではないか?とここ数年強く感じるようになってます。
北九州市立大学に限らず、キャリア教育を軸として2017年度・2018年度に講義「ビジネス入門」を担当した九州産業大学、2019年度・2020年度よりPBLの前期(前期は座学で、後期が演習)を担当している西南学院大学、これらの大学の受講生たちの声やレポートからくっきりとわかる「働くのイメージ」「価値観」「キャリアの捉え方」が、 どこか昭和のままな部分が多いのです。
もうね、今働いている20代の社会人、とくにICT活用が当たり前の職場にいる若手社会人にとっては、死後だと思っている「終身雇用・年功序列」は未だに「ある」と固定概念があるし、「入社したら定年まで1社」が当たり前、と本当に思っている大学生がなんと多いことかと。
じゃあ、なんでこのズレが起きているのか?そもそもキャリア教育って?を文部科学省から引っ張ってくると。
キャリア教育が導入されたそもそもは?
文部科学省の資料から引用すると、冒頭に「キャリア教育が提唱された背景」として以下のように記されています。
キャリア教育の重要性が叫ばれるようになった背景には,20世紀後半におきた地球規模の情報技術革新に起因する社会経済・産業的環境の国際化,グローバリゼーションがある。その影響は日本の産業・職業界に構造的変革をもたらしたことにとどまらず,我々の日常生活にも大きな影響を及ぼしたことは周知のことである。キャリア教育導入の背景を考える上では,このような社会環境の変化が,子どもたちの成育環境を変化させたと同時に子どもたちの将来にも多大な影響を与えたことを認識することが重要である。情報技術革新は,子どもたちの成長・発達にまで及び,さらに教育の目標,教育環境にも大きな影響を与え始めている。
キャリア教育とは何か-文部科学省(PDF) より引用
この背景のメインキーワードである「情報技術の革新」が、何をもたらしているのか?
まさにここの部分が、小中高の先生たちの中で、とても解像度の低い状態でしか捉えられてないのではないか?と思っています。
もはや理由は明確かと。教育現場のICT化が15年近く遅れているからだと確信。
昨年、福岡市内のとある中学校の先生とやりとりしていたとき「メールアドレスは学校代表のが1つありますが、普段は使っていません。データで資料送ってもらっても、外部と繋がっているパソコンが1台しかないので、そのパソコンのところに行って出力をしないといけないので、ほとんど使われていません」「ファックスはないんですね?」と、電話でやりとりをしていました。
子どもたちにとって、親の次に近い存在である学校の先生たち。そもそも転職組みは少数派で、ようやく団塊世代が抜けて若手が増え始めたとは言え、終身雇用・年功序列な「組織と仕組み」の中におり、職場環境のICT環境は15年前な状況。だったら、なおさら「情報技術の革新」がプライベートなマスコミ情報か、手元のスマホからしか入手できず、「仕事でどう使うか」の議論も起こらず、キャリアの価値観は時が止まった状態に近いのでは、と。
キャリア教育はオンライン化する!
この2020年に起きたコロナショック。日本中の教育行政の上から下まで、てんやわんやの状況です。おそらく先進的なのは埼玉県戸田市?ここ九州だと熊本県熊本市がタブレット導入が早かったですよね。もともとは佐賀県武雄市は樋渡市長時代にiPadを教育に導入!と言ってたのが2010年だったので、相当早かったんだと思います。
そして熊本の導入が早かった理由は、震災を経験し、教育が止まった有事を経験していたからだ、という話を聞いて納得。
はい、本日(6月2日)時点で、北九州市での小学校でのコロナ感染が発生した状況を見るに、今後教育現場にICT化の大波が押し寄せることは必須です。
そうなると、今回僕が2大学で経験しているような、学生側に1人1台の端末がある状況が日本中に生まれます。
そうなると、必然的に「情報技術の革新」の最先端にいる、超優秀なキャリア教育ができる先生の「オンデマンド授業」が最強なわけで、それをネット配信できたら日本中の子どもたちが受講できるわけです。
ここで、僕がキャリア系の授業で必ず流す動画があります。少し再編集してYou tubeにて公開しました。3分30秒ほどの動画ですが、大学生のほとんどが「衝撃的だった、全然知らなかった」と言うので、もうこれだけでもオンラインの効果を感じます。
じゃあキャリア教育を「オフライン授業」でやろうとすると?
制約として、近場にいる地域の社会人に依頼することになりますし、受講する人数が多ければ多いほど、ホールや体育館に詰め込んで(いや密やし!)、講演スタイルでしか開催できません。しかも、それだと注意力は散漫になり、寝る子も続出するでしょう。
もう、キャリア教育の実習的な要素を除いた、「情報技術の革新」がもたらす働き方や組織の変化、人生100年時代の多様な働き方、なんかの知識伝達要素が多い「キャリア授業」は、オンライン・オンデマンドの波は必須です。