DIY不動産

DIY賃貸がすごい!空き家がコミュニティで再生する福岡最新事例

15年くらい前まではリホームという言葉が一般的だった。ところがリノベーションという言葉が出てきて、内容もより細かく、よりデザインが入ったように思う。ただ、これから空き家がまだまだ増えていく日本の不動産業界において、リノベーションというのは「新築」と同じく価格を上げることができる手法として使われてしまっていると知った。

 

賃貸住宅フェア2018in九州のセミナーをグラフィック化

これまでほとんど絡んだことがなかった不動産業界、テンジン大学をキッカケに縁のあるスペースRデザインの吉原さんがセミナーで登壇するというので、そのセミナー内容をグラフィック・レコーディングしてみよう!となり、やってみた。

 

2018年5月15日(火)・16日(水)の2日間連続で「DIYの社会学」・「DIYの経営学」と題して、1日目は吉原さんとともに九州産業大学の信濃先生や福岡大学の西野先生が登壇。そのトーク内容のグラフィックはこのようになった。

 

2日目は吉原さんとともに、DIYの当事者として久留米より不動産オーナーの半田兄弟(啓介さん・満さん)や、DIYを手掛けた大工職人の方々、不動産管理会社としてスペースRデザインの前田さんなどが登壇。登場人物が多すぎ、かつ時間も途中で切れて会場も出なければいけなかったので、グラフィックも中途半端で終わってしまったがこのようになった。

 

賃貸住宅フェアには、多くの不動産オーナーが駆け付け、新たな手法を学びにきたりもしているようだ。いろいろ聞いて知ったのだが、不動産オーナーは「不労所得者」に見られるため、恨み妬みも買いやすく、普段よりあまり顔が割れないようにしてしまう職種らしい。だからか、これまでテンジン大学等やってきてそれなりに多種多様な職業の人と出会ってきたが、不動産オーナーと堂々と言っている人には一度も出会ったことがなかった。

 

そんなオーナーさんが溢れんばかりにセミナー会場に入り、上のグラフィック・レコードしたホワイトボードをパシャパシャ写真撮って帰られたのは印象深かった。

 

従来のリノベーションは持続可能ではない

サラリーマンを辞め、家業としてボロボロの複数のビルを引き継いだ吉原さんは、当時誰に聞いても「取り壊して新築にした方がいい」と言われたそう。築30年を過ぎるとジワジワほころびが出て、築40年ごろには「時代と合わない設計」も露呈し、家賃を下げ続けないと入居が決まらないビルになり、最後は低所得者だらけで家賃滞納も増え・・・の悪循環に陥ることが定例だそう。

 

そんな吉原さんは、建て直しの予算もなく、当時はリノベーション会社もなく、「自分でやってみる!」ところから始まったそうな。それが途中で「入居者も一緒にリノベーションする」という手法が生まれたり、「自分たちで自由にカスタムできる賃貸」にすると、こだわりのある個性的な人が集まったりして、ニーズがあることを発見。

 

自社所有物件がそれらのやり方で再生していったことから、「うちのビルもやってほしい」という不動産オーナーが現れ、再現性あるやり方で「自分たちで自由にカスタムできる賃貸」いわゆるDIY賃貸という市場を切り開いていった。

 

日本の不動産業界において、リノベーションというのは「新築」と同じく価格を上げることができる手法として使われてしまっている

 

と冒頭で書いたが、フルリノベーションを不動産オーナーや管理会社の方でやってしまうと、「価格・デザインから、消費者は新築と同じ目線で見る」ことになる。これはオーナーや管理会社にとってはおいしいが、現代の空き家率が向上していく中では「都心部に近い都市でしか効かない」やり方で持続可能性が低い。

 

では“DIY賃貸”の何が価値になるのか?

 

開かれたDIYが新たな価値を生み出す

今回の2日目のセミナー「DIYの経営学」で登壇された方々に共通するのは、「自分たちで空間を自由にカスタムしていく」というDIYを、入居後の入居者だけにやってもらうクローズ(閉じられた)DIYではなく、部屋の募集開始をする前からイベントとしてDIY体験ワークショップから見学会・交流会を連続して開いていったこと。

 

これは従来のリノベーションした部屋だと「消費者は消費者のまま」だったのが、募集開始前から多様な人々が関わることで、多くのプチ生産者が生まれる。そこにコミュニケーションが生まれることで、感情が流れ、その感情がDIYした部屋から物語としてインターネットやSNSに載って流れていく。すると不思議なことに、従来のリノベーションした部屋よりはるかに広告などの「周知する予算」がかからず、また物語を理解し納得した入居者が現れるため、入居後のコミュニケーションや関係性も良好。入居者同士の繋がりも生まれ、賃貸住宅ではありえないほどのソーシャルキャピタルあふれた物件ができあがるそうだ。

 

ちなみにこちらはスペースRデザイン社が手掛けた福岡市南区の築40年程度の物件(DIYする前)。

それが半年以上、空き家だったところが開かれたDIYを実施したことで、入居募集開始から2カ月以内に全部屋埋まり、家賃も上げられたというからすごい。部屋もなんか尖っててカッコイイ!

そしてこれを、福岡県内で事例として研究し情報交換し学びあっている方々が「福岡DIYリノベWEEK」という体験・見学が一気にできるイベントを毎年開催。日本全国から視察も含めて不動産オーナーがやってくるそうだ。

 

何が一番すごいって、大都市福岡市だけじゃなく、久留米や衰退著しい大牟田でも有効性が明確にわかってきているところ!これからの福岡不動産業界のDIYが熱くなりそうだ!

【参考】DIY賃貸特集(スペースRデザイン)



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