2023年3月23・24日(木・金)にて、福岡市にあるマリンメッセで“九州初開催”の九州オフィス・業務支援EXPOが開催されました。従業員のオフィスワークにおける作業・業務の効率化をするような、様々なデジタル・オンラインサービス事業者が出展したり、福利厚生などのオフィス内の食事・お菓子等のサブスクサービスの事業者、その他事業の拡張・新規開拓等の支援ツール・サービスなどの事業者が出展していました。
そんな九州の経営者や総務・人事・管理職級の方々が来られるようなビジネス展示会にて、依頼をいただきセミナーをしてきました。
セミナータイトルは「企業価値を高める経営へ~人的資本への投資は組織の何を変えるのか!?~」。2日間かけていろんな実務的なセミナーがずらりと並ぶ中、ちょっと中長期的目線の社会学的な視点から経営や組織づくりにアプローチする話をする自分に、声をかけていただいたので気合入れてセミナーをしてきました。
セミナーのプログラム設計をAIに手伝わせてみた
まぁ余談ではあるのですが、2023年に入ってからちょこちょこと触っていたAI、ChatGPTくんに要件定義をしたうえで、どのようなプログラムが良いか考えてもらったりしました。
今回のセミナー所要時間は60分。通常45分以上の所要時間を依頼いただいたら、一方通行の講演だけでなく、何かしらの体験(言語化や対話など)を盛り込むように必ずするのですが、世界中のネットにある情報を学習しているAIだけあって、セミナーのプログラムに「体験」を盛り込んだ設計をしてきました、さすが、賢い。
とは言え、細かい環境情報や参加者属性がわりと不明なので、AIも詳細までは設計しきれません。自分なりに考えた体験は
「中小企業版・人的資本経営チェックシート」です。
20問程度の、「よくあてはまる」から「あてはまらない」までの4段階評価で1~4の数字を入れていくだけのチェックシートで、最後に合計点を出して80点満点で自己採点できるようなものをつくろうと思いました。
このチェックシートの20問の項目を、AIに考えてもらったところ、ものの数秒で20案出してくれたので、もともと考えていた項目案と照らし合わせながら10案ほどを少しカスタマイズしながら採用。出来上がったチェックシートの項目が以下の20問です。
※「よくあてはまる=4」「ややあてはまる=3」「ややあてはまらない=2」「あてはまらない=1」で採点してみてください。
中小企業版・人的資本経営チェックシート(岩永作成)
1.自社の人材採用は、新卒・中途含めて定期的に実施している。
2.求める人材像や採用基準を明確して採用活動を行っている。
3.採用活動を通じて、企業のビジョンや文化を伝えることができている。
4.副業兼業、 フリーランス等の外部人材を活用したことがある。
5.社員の適性や能力を把握するための評価方法を定めている。
6.社員のキャリアアップのために、明確なキャリアパスを設定している。
7.社員の成長を促進するため外部講師を招いた研修を実施している。
8.有給休暇がちゃんと使われていて、使いやすい雰囲気がある。
9.男性社員が育児休暇を取る風土ができている。
10.管理職の女性の割合が20%以上になっている。
11.社員のストレスやメンタルヘルスに配慮する取り組みを実施している。
12.ZOOM等のオンラインミーティングを日常的に使っている。
13.上司と部下のコミュニケーションを円滑にするため、定期的な面談を実施している。
14.社員同士のコミュニケーションを活発化するための取り組みを実施している。
15.職場のコミュニケーションの質を向上するために研修やワークショップを実施している。
16.ハラスメントやコンプライアンスについて会社として方針を定めている。
17.新規事業や新サービス、 新商品など会社として新しい取り組みが2年以内にあった。
18.経営理念やビジョンがあり、社員に浸透している。
19.ダイバーシティ経営について取り組んでいる。
20.SDGs、 ESGに対して取り組み、目標設定や情報発信をしている。
80点満点で、自分が支援している企業をそれぞれ岩永視点で採点してみましたが、一番点数の高かった企業でも61点でした。中小企業、とくに九州の企業で(もちろん業界にもよりますが)なかなか60点以上を取るのは難易度が高いと思っています。ましてや、ハラスメント系の対応や、ダイバーシティ経営、SDGsやESG関連、さらには社内研修に休暇の制度等、全部やるインセンティブが働きやすいのは大企業や外資系企業です。
ということで、当日会場に来られたセミナー参加者約30名のうち、60点以上を取られた方は4名(4社?)いました!すごい!!
こんな「情報生産」の仕事のアシスタントをAIができる時代にもなったんだよなーと思った事案でした!
セミナーではどのような話をしたのか?
セミナー後、名刺交換に10名近く並んでいただけたので、思った以上に好評だったのでしょうか。ありがたいことです!
ということで、どのようなことを話したのかざっくりと書いてみます。
・セミナー参加者に質問4つして挙手で応えてもらう
→上場企業?非上場企業?
→経営者?総務・人事系?その他?
→採用活動してる?新卒?中途?
→社員研修してる?キャリア系?リーダーシップ系?社内コミュニケーション系?
・自己紹介
・組織における関係性に着目
・中小企業版 人的資本経営チェックシートを記入
→~39点:伸びしろしかない!
→40~59点:まだ取り組んでない領域もある
→60点以上:社員の入れ替わるタイミングでいろいろ取り組むチャンスがまだある
・これから日本で起こること
・総人口と生産年齢人口の加速度的な減少は今から始まる
・若者はより都会を目指す
→人材獲得競争はまだ序盤、これから本格化
・日本の企業の現在地は?
→企業は人に投資せず
→個人も社外学習、自己開発あまりしない
→投資家はもっと人的資本に投資してほしいと思っている
→日本人のエンゲージメントは国際的に見ても最低レベル
→それらはマネジメントの方に課題があるよね
→現在の勤務先で継続して働きたい人の割合は低い
→仕事におけるウェルビーイングとパフォーマンスには相関がある
→人数規模が小さいと、より強い相関がある
→最近の新卒学生は、転職前提で就活。ファーストキャリアをステップとして会社選びしてる。
・人的資本へ投資している企業は業績にプラスになってる
→外部人材活用している企業は売上成長率が高い
・今後は大企業、上場企業と地方中小企業の人材獲得競争がガチ
→2023年3月より人的資本経営の情報開示が施行されている
→人材開発の額や時間、女性管理職、男性育休や男女間差別などの情報
→学生や若者は、自身を労働資本と捉えてより期待値の高い職場に投資(就職)する
・だから中小企業の方が人的資本経営をする意味がある
→支援企業の事例①
→支援企業の事例②
・人的資本経営のススメ
→エンゲージメント
→関係性のデザイン
→研修や対話機会
→外部人材の活用
・皆さんへ未来への“問い”
「(これは未来です)あなたの組織のエンゲージメントが向上し、管理職のマネジメント力が向上し、若手の成長が促進される環境に。そのとき、「職場」にはどのような空気が流れ、「従業員」はどのような気持ちで仕事をしているのでしょうか?」
→この問いから想像する未来のありたい姿から、逆算的にいろいろ手を打てることを考えて、人的資本経営に着手してみてはいかがでしょう。
以上の内容でセミナーを実施しました。セミナー後に名刺交換に来られた、福岡県内のとある企業では、役員の方がこられ「まさにうちの会社で取り組まないといけないと考えていた内容でした」というお声をいただきました。
人的資本経営は、まさに経営陣がちゃんと現状を認識し、描く未来に向けて実施する手段ですので、そのような企業がこの福岡で増え、よりよい職場が増えていくと、福岡の未来も明るくなりますね。