教育・人材育成

大学生が持つ就職のイメージは偏っている

12月6日(日)、福岡県男女共同参画センター“あすばる”の主催で、福岡で活躍している社会人と大学生が語り合うワールドカフェ「熱談!働くこと・生きること」が開催されました。今年で5回目、第1回から参加していて(途中1回不参加)、ファシリテーターは福岡女子大の和栗先生。僕の教育業界の“姉”的存在です。和栗さんが「来い!」と言うものは、基本行きます。

※画像はワールドカフェのチラシに掲載されている社会人一覧

参照:福岡県男女共同参画センターあすばるWEBサイト

 

 

今の大学生を包む「就職後のイメージ」

まぁ昨今の大学生たちの情報源と言えば、テレビ・新聞などのマスコミや、ネットでの口コミ、会社説明会などへ出ての人事の方からの話が中心かと思います。その中であまり出てこないキーワードが「転職」、そして「独立」です。

 

大正時代にはわずか30%程度しかいなかったサラリーマンは、昭和に入り激増。田舎から都会へサラリーマンになりに多くの若者が出てきて90%程度が「雇われている人」(正社員~契約・派遣・アルバイト等、そして社長職も含む)である、国にとっては非常に管理しやすい・把握しやすい効率的な社会が出来上がりました。ライフスタイルも似通っていて、地方企業か全国支社のある企業かで階層が分かれ、毎年「新卒」を採用するサイクル。

 

しかしバブル崩壊後の1997年ごろから日本の「生産年齢人口減」とともに、このサイクル・ライフスタイルが崩れだしています。そのため団塊ジュニア世代は大量のフリーターを生み、2000年以降は新卒の就職氷河期もあり「第二新卒」という言葉も出てきて、今では大卒の30%、高卒の50%が3年以内に離職する、なんて言われていますね。

 

そんな「社会の状況」があるにも関わらず、この5年間に関わってきた全ての大学生は「会社を辞める」というイメージが非常に「悪」というか、「負け組」「人生の失敗」みたいなイメージで語られたり質問されたりすることが多いです。相も変わらず。

 

 

社会が大学生へ伝えるメッセージの矛盾

今回のワールドカフェに参加している社会人、ここではリソースパーソンと言いますが、ファシリテーターとして前に立ち進行を進める和栗先生はじめ、多くの社会人は「転職組」なんです。和栗さんは大学院を卒業後にNGO職員、そして大学教員を数大学して今の福岡女子大に声がかかりやってきています。

 

その他にも「起業した」という方も数名。ずっと畑は一緒だけど転職して「活躍できている」という人も多い。大企業や地元有力企業に新卒から入った人くらいですね、転職していないのは。この日のリソースパーソン22名中、転職していないのはおそらく(聞いたわけではないですが肩書的に)7割くらい。

 

で、「転職は悪、やらない方がいい」なんてイメージを抱えている多くの大学生にとって、そもそもの部分でビックリするわけです。そんな声をほぼ毎年聞きます。「皆さん、意外に転職されてるんですね」と。

 

 

優秀な人から去っていく、は真理!?

上に書いた「大企業・地元有力企業」はその抜群の安定感から転職する人は少ないですが、そうではない企業に入った人の中で、「自分はこんなもんじゃない、もっとやれるし、もっと成長できる」なんて想いや気概があると行動に出ちゃうわけですよ。ステップアップとして転職したり起業というチャレンジを選択しやすい。そして結果的にその想いや気概から「活躍している人」になれるわけです。

 

じゃないと企業の中で埋もれている、社会的に活躍!とは言えない人は、ここのリソースパーソンとしては選ばれませんからね。で、学生たちは気づいちゃうわけです。「イキイキと輝く人は、環境やステージを自分で作ったり選んだりしている」って。それって、優秀ないし優秀になる資質を持った人は行動をする(会社を辞める)、ということに。

 

 

大学やメディアはそんなこと言わない

そしておもしろいくらいに、僕らの時代から変わらず大学の就職課もキャリア教育も、多くのメディアもそんな事実はほとんど語らないわけです。大学の就職課やキャリア教育なんて非常に偏っていて、「大企業や地元有力企業」との繋がりが強かったりするため、新卒からずっと働き、会社の中で成長し、人生を送っている人、というモデルしか紹介しないわけです。

 

メディアも多くが「大企業や地元有力企業」ばかりのネタにします。統計データがとりやすかったり、そんな企業自身がプレスリリースしたり、広告出したりするので。

 

でも、かたや行政が主催した今回の社会人と大学生のワールドカフェに「来てください」と言われる社会人って、言わずもがな上に書いたようなことになるわけです。これは、福岡だけの話ではなく、おそらく日本の多くの都市で起きている“事実”だと思うんですよね。

 

これを大学生が読んだら、どう思うんでしょう?

これを大学の就職課の方やキャリア教育を担当している先生なんかが読んだら、どう思うんでしょう?

 

時代はどんどん多様化しはじめて、雇用形態に関する情報も指数関数的に増えていて、もはや「モデル」が多すぎる現状がありますが、前時代的なことしか知らない人が、大学生と接点を持っている現状は、どげんかせんといかん状況だと思ったわけです。

 

ちなみに「転職が良い!」という意味ではなく、大学生に与えられる立場にある社会人が、偏った情報しか提供できていないため、「選択肢の幅が狭くなる」ことをなんとかできんかなーと思うのです。なので、今回のようなイベントを行政がやる意味は非常に大きい、と思っています。



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