世界を一変させた新型コロナ現象が起こった2020年が終わり、いまだ落ち着きを見せないまま2021年が始まりました。年末年始はテレビを付けて視る時間が長いのですが、新年明けてすぐのリアルタイムな情報系番組のほぼ全てで「コロナ」をテーマに、各分野の専門家が言い合っています。
このコロナがもたらした様々な現象を見るに、これから日本で起こることは明確に「格差の拡大」だと思っています。
日本はコロナによってSDGsがより加速する、なんて言われていますが。世界は2015年に国連加盟国全会一致で採決した2030アジェンダのSDGsに向けて、アクセルを踏み始めていた矢先のコロナだったわけで、世界ではすでにコロナによって「格差が拡大」したと言われています。
持つ者、持たざる者の差が浮き彫りになるDX
コロナ前からデジタルトランスフォーメーションの略称“DX”は言われていましたが、日本は多くの業界が1980~2000年にかけて構造が最適化されてしまったため、DXは世界的に見ても出遅れています。
そこにやってきたコロナ。
リモートワーク、オンラインミーティング、オンライン営業、オンライン飲み会、オンライン授業、いろんなことがデジタルで作られたバーチャル空間の中で可能になりました。
正確には、すでに可能にしてくれるサービスはあったのですが、日本は普及が遅くて利用者も少なかったわけです。そのためリアルな移動を支える公共交通機関は都心部ほど盛んで、駅近の箱モノ不動産への投資額は年々高騰していました。
ところが、重力が一切ないバーチャル空間でコミュニケーションをすることが当たり前になっていく現象。リモートワークではタスクベースで仕事が進み、オンラインミーティングでは雑談が入るスキマがなかなかなく短時間で終わる。ネット環境と処理能力の高いデバイス(PCやタブレット、あわよくばスマホでも)があれば仕事ができてしまう。
そうなると、本当の意味での組織力の差、マネジメントの差が圧倒的に結果に反映されてしまう世界。
ほぼ全ての大学でオンライン授業が始まり、年配のネットリテラシー低く、教育に情熱のない先生方の授業と、若くてネットリテラシーも高く、YouTuberにも劣らないレベルでのオンライン授業や、対話のある場を創出できるファシリテーター力のある先生方との授業にも、雲泥の差を生み出しました。
そしてそれらは「提供側」の差だけでなく、「受け取る側」の差も激しく進めてしまうものでした。
要するに、仕事をする場も、学び合う場も、無重力なバーチャル空間にシフトしてしまうと、その空間の自由度が高い人、機動力が高い人が圧倒的に有利です。重力のあるリアルな世界でも、フットワーク軽く、早く、どこへでも動けてコミュニケーション取れる人が強者であるのと同じで、無重力空間でもその能力と経験の差が明確に出ます。
ましてや、いまだ無重力空間へシフトできずに二の足を踏んでいる個人や組織と、すでにシフトして加速度つけて動いている個人や組織との差は圧倒的。
日本がこれまでDX化に向けて鈍行で向かっていたのを後目に、世界の先進国(とくに中国)や途上国ですら、DX化を進めている国はありました。
そんな中でやってきたコロナによって、急にギアを上げてDX化に舵を切ったとて、付いていけない個人・組織は振り落とされていくことになります。
コロナで都会より地方、ではなく都会シフトが起こる
withコロナの時代は、開疎化だ!と2020年3月ごろに、シンニホンの著者である安宅和人さんのNewsPicksでの発言で広がっていったように思います。
確かにすでに無重力空間シフトを済ませた個人や組織は、密が多く維持コストも高い都会にいる理由はありません。よりライフクオリティを高めるため、より良い立地目がけての移動ができるでしょう。
しかし、地方は、田舎は、そんな状況にほぼありません。
この日本という国の産業構造を見るに、製造業は2000年代に海外シフトがほぼ終わり、モノづくり国家の姿から遠いサービス業の国になりました。国民の生活を支えている多くの仕事はサービス業。近年のインバウンド観光が多くの地方を潤わせていました。
そこにやってきたコロナが、人々の行動を制限して起きたことは誰の目にも明らか。都会はより密を避けるため駅近ほど売上が戻らないと言われるものの、大企業としてはブランドと雇用している人の働きやすさなどを総合的に見て、本丸的な場所は撤退しない傾向のようです。
それよりも観光に依存していた地方や、高齢者に依存していたところの打撃が大きいでしょう。病院ですらコロナによって外来患者が激減し経営が危ういと言います。地方からは花のあったサービス業の仕事は激減し、残るのは福祉の仕事ばかり。
そうなると、若い人ほど仕事を求めて、無重力空間で強者であるITやネット系企業に魅力を感じて、より都会へ出てくるようになります。
地方創生は腰折れし少子化は加速
コロナがもたらした現象は、人の移動・行動制限だけではなく、身近な人との交流機会の減少です。それとともに産み控えも確実に起きていると言われ、年間の出生数も80万人割れは確実となりそうな気がします。
若者がすでに少ない地方ほど、より保守的な考えや空気に包まれている地方ほど、それはより顕著にでるのではないでしょうか。高齢化による高齢者の数は減ってないのに、子どもの数は一気に加速して減少することで、より地方は活力も未来への投資も厳しくなります。
何より、コロナ対策による巨額の財政出動をする国がある一方で、都会で上がる納税の地方への再分配である地方交付税交付金がないとやっていけない地方では税収減も甚だしく、今後はない袖は振れない状況へ。
地方創生はもはや絵に描いた餅になってしまったのではないかと思います。
働き方がジョブ型になると雇用形態に変化が起こる
コロナ前より大企業で始まっていた45歳以上の早期退職、いわゆるリストラがこのコロナによって35歳以上という文字をメディアで見かけるようになりました。
リモートワークが進むと、自然とジョブ型になり生産性を上げるマネジメントをするには、中間管理職の役割がこぞって変化します。業務としての正社員・契約社員・派遣などの境目は溶け、副業・兼業も可能になってきます。
年功序列で動けない組織ほど、非効率と生産性が上がらないストレスで、若手は他の組織に転職していくことも起きやすくなると思います。
これまでの雇用形態がじわじわと、そして音を立てて崩れるような気がしています。
誰もが自律的な働き方をしていくには、キャリアデザインを学ぶ必要性が高まると思っています。
収入のポートフォリオ化
金融リテラシーという言葉を近年よく聞くようになりました。インターネット登場前は、お金に近い価値を持つものは限られていました。しかし、インターネットが登場したことで、よりリアルタイムに様々なことが取引されるようになり、お金はより情報化・概念化が進みました。
そうなると、今回のようなコロナで巨額の自国通貨の量的緩和が続くと、自国通貨は自然と値下がりし、相対的に価値が変わりづらい金などの価格が上昇します。同様に、通貨以外の資産価値あるものの値段は上がりやすくなり、株も不動産も値上がりが期待できることになります。
株式市場は、世界中で起きていることの“今”をリアルタイム反映しています。世界的な株高はすでにいろんなことを織り込み済なのです。
日本人は貯金が大好きです。というより、貯金以外の運用を教わることも、お金の概念化を勉強する機会もなく、ただただ銀行に預けることが最も安全だと思い、今日も円通貨に100%投資します。
そして労働による対価、いわゆる所得収入のみが収入手段という選択肢しか知らないため、資産運用による運用益のことを知らないまま長年働き続けている人が多いのも事実です。
これから世界は、お金がより情報化・概念化が進み、さらに金融商品化したようなものが溢れていくことが予想されます。その最も代表的なものがクリプト・仮想通貨なのかもしれません。
収入を正社員として雇用される会社の所得収入1本だけでは、とてもリスクの高い運用と言え、副業や資産運用の売買益から配当など、収入のポートフォリオ化を進められた人とそうではない人の差も、これから激しく広がりそうです。
立ちすくまずに深く考え、行動しよう
今、世界では何が起きているか。
インターネット登場前と登場後で明らかに違うのは「情報量」。そしてお金の情報化・概念化。
もう物質的な豊かさは、世界のほぼどこの国にいても享受できるほど人類は豊かになってきました。ましてやここ日本では、とても質の高い物が安く手に入ります。
そうなると、そこから付加価値をどう付けていくか。それは所得収入を生み出す自分自身ですら、1つの金融資産として運用していくことと同義になります。
その中では、この溢れた情報をいかに使いこなし、信頼や信用に価値転換していくか。重力空間(リアルな世界)でも、無重力空間(バーチャル空間)でも、スキル、体力、さらには価値交換に必須なコミュニケーション力を持っているか、鍛えられるかどうかが個人の可能性をグンと広げることになります。
そしてそれらすべての能力を向上できる「環境」が大事になります。自然とその環境が得られた人もいれば、運悪く得られなかった人もいるでしょう。
そんな世界で、最も大事なことは置き換えができない、コピーできないこと。重力のあるリアルな世界ではもちろんのこと、無重力空間でもコピーできない何かであることが大事です。
そのため、どれだけ深く考え、凄まじい文脈を纏う物語にし、行動を起こして他者と共有できるか。
その最もたるものが、今日本で一番話題になっている鬼滅の刃に見ることができると思っています。
アニメ・映画を観て、マンガも全巻読んでみて、この作者が1巻から描いていたあらゆる伏線が、圧倒的なボリュームとなって最終巻まで広がっていくその物語性の大きさ・強さ・深さに、多くの日本人は言語化できない何かを感じ取っているのだと思います。
2021年が始まりました。これからの日本は、これまで見えていなかった格差が、一気に可視化されはじめ持つ者・持たざる者の差を決定付け、より「格差の拡大」を引き起こしていくと予想します。
その中で、自分はどうあるべきか。
この社会の状況を決して悲観せず、諦めず、個人や組織の学びスイッチをONにしていく。自分が思うままに、過去これまでを突き動かしてきた衝動をそのままに、行動し続けたいと思います。
鬼滅の刃は多くの核心を突いた言葉が登場します。映画版で注目を浴びた煉獄杏寿郎の母が、杏寿郎に言った言葉を最後に紹介したいと思います。