2013年から4年間、北九州市立大学で特任教員をしていたときの教え子が、転職で福岡の天神勤務になったので久々に会いランチをごちそうしてきました。彼は「企業の中途採用をお手伝いする」仕事で、エリアの範囲が北部九州と広く、週の半分を他県で過ごしたりしている。
もう1人、2009年までサラリーマンをしていた前の会社に入れ替わりで入った当時新卒の男子、かぶってないのに親交があり、現在「人材採用のための求人事業を展開する企業のマーケティング」を担当する仕事に転職している。もちろんマーケティングだけの部署なので、東京勤務。
その他にも、東京からIターン・Uターンなど地方で働きたい優秀な人材の採用を斡旋する仕事をしている友人。さらに、転職回数は多いものの優秀で、いろんな企業を見てきた年上の女性。
の福岡を中心にいろんな「人材採用」にまつわる話をよくするようになったのでまとめてみました。
東京の企業は人材に予算を使うが九州の企業は人材に予算をかけない
まずほぼ共通して出てきたキーワードがコレ。日本の人口構造を見れば一目瞭然で、生産労働人口がすでに減少局面に入り20年経ち、若い人口が年々減っている状況にも関わらず、「人材採用のやり方」がインターネット出現前の文化のままな地方の企業が多すぎるという話。
「人材採用」に関する仕事をしている人たちの話をまとめると
✔ 東京では「優秀な人材の囲い込み」をしないとライバルが多く死活問題
✔ だから「人材採用」にも「社内の働きやすさ整備」にも予算をかける
✔ 正社員だけではない「多様な働き方・働かせ方」も登場
✔ だけど九州の経営者は、そんな状況をまるで知らない
✔ なのに「求人出しても人が来ない」と言う
✔ そのくせ「優秀な人が欲しい」と言う
✔ にも関わらず採用予算はとても少ない
✔ そもそもネットリテラシーが低く、SNSどころかメールアドレスもない経営者も
✔ 結局、経営者の「年齢」がこれらの差を作っている
福岡の中小企業の経営者のコミュニティ(行政系の同友会とか協会とか)の話を聞くと、20~40代の経営者の企業と、60代以上の経営者の企業との、採用に対する「やり方」の違いがすごい差があるようです。
半年くらい前だったかな?うちは新聞とってるんですが、よく求人情報が載っていて「ここに載せるということは、再雇用とか高齢な人がターゲットなのかなー?」とよく眺めます。そこで見つけたのが、他県のとある内陸の田舎にある町の「地域おこし協力隊」の求人情報。内容を見たら、いかにも若者向けの業務にも関わらず・・・です。
はい、きっと都市部ではないところって、もう情報がなさすぎて(いや、検索すらしないし教えてくれる人もきっといない)、それしか方法がない!って思い込んでるんだと思います。地域おこし協力隊はHP上での公募は必須なので、まぁ人が全然来ずに「新聞広告出してみよう!昔はそれで人が来た」とか高齢な誰かが言っちゃったもんだから、予算使ってしまったんでしょうけどね。
でも、地方の中小企業は人が来ないと死活問題。そういうところは、残念ながら・・・滅びるほかないと思います。ということで、この10年?人材不足による営業時間の短縮・サービスの縮小・閉店は増加しているようで、なにより人材不足による「廃業」が確か5年で倍増とかだったかな?
人材採用は会社のネットワーク力がカギ
僕はありがたいことに、福岡テンジン大学の学長というソーシャルな仕事だけでなく、フリーランスとして広告・販売促進のコンサルのような仕事や、大学の教員、まちづくり、地域での講演・講師、人材育成の研修や教育プログラムづくりなど、幅広くいろんな業界の方々と接する機会があります。それがために「いい人いたら紹介してください」と持ち掛けられる機会がこの2~3年で激増しました。
で、これまでアルバイトも含めて主に正社員を紹介して採用された件数が10件くらいはあるかと。ただ、僕はいち個人で「この経営者・企業だったら、この人なら会うんじゃないか」と思った人しか紹介しないし、信用問題なのでできない。それと人材紹介・斡旋業の免許もないので、これを仕事にもできない(正確には報酬をもらえない?)。
ただ、僕と繋がって仲良くさせていただいている経営者は、僕といういろんな業界・人と繋がっている「ネットワークのハブな人」との繋がりがあったがために、人材を採用できたわけです。
そもそも、営業でも人材採用でも人海戦術ができないから、お金払って他社のサービスや「広告」に頼ることになるんだから、人海戦術ができるならそれに越したことはないんです。と言っても、インターネットの出現が繋がりのネットワークに関係ない他者にもアクセスでき、かつ安価なために新たな手法やマーケットが生まれてるんですけどね。
ただ、こと「人材採用」については多くの地方の中小企業が「最重要課題」だと思います。多くの経営者が60代を超える中、後継者もいまだ見つからず、若い人材も面接にすらやってこないという企業、どれだけあるんでしょうか?
地方の優秀な人材はシェアするのが本当の地域活性では?
この2018年5月より、僕は福岡地元のとある不動産会社の社員になりました。ちゃんと雇用契約を結びました。ただ働き方は10%。週の1日をその会社の業務に使い、出勤は週の半日だけ。役割は「会社と社会の間を埋めること」。
少人数とは言え、毎日同じオフィスで同じ人たちが集まり同じ時間を過ごしていると、どうしても社外とのネットワークは乏しくなり、生きた情報も入ってきません。かと言って社員1人1人を外に出したり、交流させたり、セミナーなど行かせたり、って時間もコストもかなりかかる。でもそれ専門の人材を1人雇うほどでもない。ということで、たまたま話がまとまり、僕が「会社に外からの情報・ノウハウ・考え方・価値観・人脈・目線を持ち込む」役として採用されました。
社長はこのような制度を設け、同じ中小企業経営者の勉強会でも発表をし、同じように共感してくれる他企業の経営者との話の中で、こんな発見もしたそうです。
「経営者同士が、お互いの会社の社員になると、ものすごい相乗効果があるんじゃないか」
うちの社員にはこんな人材いないけど、あの会社にはいる!じゃあ一緒に事業推進するプロジェクトにしよう!など、話も早く生産性も高い。自社と他社とそれぞれ持ってる資源を最適解に近い形で使えるという発想。これ、未来があるなぁと思いました。
その社長、こうも言いました。
「地方では優秀な人材は囲い込むんじゃなくて、世間のためにシェアする方が、優秀な人もますます活躍するし、自社も世間も地域もよくなる」
また別のときに、とある自治体職員の方とお話したときに、同じく「地方は人材不足」の話題になりました。この方に、上に出てきた社長の話をしたところ・・・
「地方で優秀な人というと、自治体職員の公務員か、銀行マンくらいです。どれも副業すらできないところですよね。そりゃ地方で優秀な人材を囲い込んだら地方は衰退しますよね・・・」
とまさに至言。
中小企業が生き残るには?
結局のところ、経営者がどれほどの覚悟と自分の価値観に縛られずに行動できるか?だけでしょう。今の若い子たちは、インターネットが当たり前でちゃんと引き出してあげたら、とても優秀です。ということで
・経営者が自分の考えを柔軟にする
・正社員にこだわらない
・社外とのネットワークをつくる
・副業をOKにする
・全社員をリクルーターにする
・複業社員を雇う
・ネットリテラシーを高める
これを始めれば、それなりに人材採用は難易度が下がっていくと思います。そして、これにあえて付け加えるとするなら「ボランティア活動を推進・助成する」です。理由は、副業OKにしても、時間給で働く別職場や、ネット上だけでできるブログやアフィリエイトって、全然ネットワークが広がりにくい分野。
一方で、ボランティア活動はいろんな人たちが熱意や想いをもって行動しているコミュニティです。そこで出会う人たちは、信頼関係もすぐ築きやすいし、全社員がリクルーターになって、それぞれいろんなボランティア活動していたら、まぁ人材採用だけなくいろんな「配当」が会社に訪れると思います。
1年前に書いたこちらの記事も参考に。
言うなれば、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)ですね。あ、僕ですか?ご要望があれば非常勤社員というお仕事について、やり方・働き方・働かせ方などなど、相談に乗りますよ。もちろん仕事として!
社内からイノベーションを起こす人材を、と思ったら複業人材を生み出すのはハードルが高いので、まずは複業フリーランス的な人材を入社させることが一番やりやすいかもしれませんね。