「働き方改革」がだんだんと大きな波になってきました。人口が減って労働人口が減少する中で、業績好調な産業界は人手不足がすごいです。この人材不足は今より改善することはなく、2050年に向けて残り31年で2,300万人もの労働人口の減少に見舞われる我が国は、AI・ロボットなどのICTを導入しての効率化を一気にやって生産性上げないと後がないところまで来ていると思ってます。
超売り手市場の大学生たちの今
2019年度の前期、北九州市立大学にて「キャリアデザイン」の講義を3分の2ほど受け持つことになりまして、約350名ほどの大学生たちに毎週講義をしています。男女は半々、学年は1年生がメインで2年生もいます。半数以上が数カ月前まで制服着て高校に通っていた、受験戦争を戦っていた子たちです。「キャンパスライフだ!ワ~イ!」のタイミングでこのキャリアデザインの受講を決めた350名、現在は恐ろしいくらいに寝る人がおらず、おしゃべりもせず、毎講義しっかりレポートを書いてくれています。
さてこの約350名、公立大学だけあってみんな真面目、マジメ、まじめ。講義中に質問したりレポートから読み取れる講義初期のころの学生の性質は
- 将来の「起業・独立に意向」はかなり少なめ
- できれば「終身雇用を望む」
- 「転職は悪」だと思っている
- 名前の知られた大手企業に入れば一生安泰
- やっぱり公務員最強
こんな感じです。どうでしょう?地方の公立大学に通う、様々な学部生が混じっているキャリアデザインの講義は、このような「昭和型の親の働き方をモデル」とした学生たちを相手に、複業フリーランスの自分が教えるという、なんともギャップがありまくる構図です。
昭和・平成・令和の働き方の環境から見てみる
キャリアデザインでは、まず「親や高校までの学校の先生の言ってること」の価値観を崩すところから始めていきます。
- 大手企業に入れば終身雇用
- 女性は結婚したら専業主婦になる
- 入社したら年齢とともに給料が上がる
本当にこう思ってる、思わされている大学生のなんと多いことか。世の中の多くの労働者は大企業ではなく中小企業で働き、大都市圏と地方では地方の方が共働き率は高まるのですが、そのような世の中の「数字」は全く知識がない模様でした。
2019年5月、経団連やトヨタ会長からの「終身雇用はもうムリ」的な発言のニュース。カネカの男性育休に関する炎上ニュース、そんなリアルタイムの話題から、昭和・平成の価値観と、これからの令和時代の働き方がガラガラポンしようとしている状況を解説していきます。
さらに科学技術の進化は目覚ましく、AIやロボットの現在地を確認し、これから起こる5Gの世界、そして予測されている日本の人口、企業のビジネスシーンが変わるということは、働く人の「働き方」も大きく変わらざるを得ないことを意味します。2013年だったか、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授の「未来の仕事」が世界に衝撃を走らせて以来、ジワジワとその未来に近づいていることを感じるのですが、2019年にマイケル・オズボーン准教授の「未来のスキル」という話も非常に興味深いものでした。その中でのこのコメント
「仕事がなくなる」わけではない。
ただ「仕事に求められるスキルが変わる」。
マイケル・オズボーン(准教授) オックスフォード大学
なんかも扱いながら、「じゃあ、未来の働き方に向けて、今の大学生のうちに学んでおくことは何か?」に触れていきます。
岩永式キャリアデザイン
会社員を経験したのちに独立し10年が経ちフリーランスではあるものの、現在は企業の社員としても働きながら、複数の大学で授業も受け持ちつつ、行政とのプロジェクトを協働したり、NPOを経営したりプロジェクトリーダーしたり、10代から60代まで幅広く講演の現場があったり、そして2018年より福岡HUBのリーダーとなったおかげで、「フリーランス協会」が東京から発信していってる新しい働き方の市場の情報がひたすら入って来るようになり、経産省が「副業兼業」をやたらと推進し始めたり、企業の「フリーランス人材活用」に予算が付いたりしてきている現状もわかり、日本という国を挙げて「今までの働き方だと、生産性上がらず高齢化進んで国が終わる」という危機感が強まっているのを感じます。
ということで、今後はAI・ロボットなどの自動化、スタートアップ企業の勃興、シェアリングエコノミーの拡大、そして「働き方改革」による短い時間でいかに生産性を高くするかという産業界の方向性。これらの先にある「未来の働き方」とは?
無形資産の蓄積と学び続ける姿勢
これが何より大事になると確信しています。そのために、今回のキャリアデザインでは
- テクノロジーの進化
- 人口減少する日本の未来
- お金の正体
- 信用に交換できる価値あるもの
- 企業とビジネスモデル
- マーケット感覚を身に付ける
- 誰にでもあるリーダーシップに気づく
- リフレクションの意味と体験の言語化
これらのことを総合的に学べる内容で組み立てました。これまで岩永が得てきた経験と、読書や動画学習や多種多様な人たちの仕事・働き方を見てきて得たものを体系化し、全て詰め込んだフルセットです。
内容が刺激的なのか、中には社会人枠で北九州市立大学に通っている大人たちも、履修していないのにこの講義には出て聴講してくれています。こういうの嬉しい!
毎講義ごとにクオリティの上がるレポート
非常勤講師としての謝礼は、登壇する90分あたりの単価なので、準備時間やレポートチェック時間は含まれないにも関わらず、自分の信念として約350名が書く毎講義の最後に課す「問い」に対するレポートを、全部読んでいます。そして次の講義の冒頭で、いくつか気になったものや良かったものを取り上げて紹介しています。
これをしていくと何が起こるか。約350名とは直接コンタクト取れないのですが、ちゃんとコミュニケーションをしている感覚になり、レポートと講義が対話的になっていきます。学生たちとの距離がグッと近づき、熱量を感じられるようになるんです。
レポートのクオリティもどんどん上がります。「講義が終わって気になったので調べてみたところ~」という講義が終わったあとの自主学習の行為を紹介すると、次のレポートのために「調べるという行動」を起こす学生が増えてくれて(笑)。純粋で素直だなーと思いますが、真似て調べた結果、新しい知識や気づきに講義以外で出会えること、そしてそれを「自分で見つけた」ということがとても大事なのです。いわゆる自己学習ですからね。
このように、レポートが講義をつくってくれて、学生たち自身がこの講義への参加度合いを回を追うごとに高めていってくれるので、本当に350名もいるのかな?ってくらい、北九州市立大学の大講義室は一体感があります、というか一体感が出てきました。
あと残り2回。この前期の半年間で、「働くこと」への解像度が凄まじく低かった学生たちが、どれくらい解像度高まったのかの「ふりかえりレポート」が最後に課されるわけですが、それを読むのが楽しみでたまりません!!