近年、福岡の郷土料理として紹介されることが増えてきた「ごまさば」について紹介します。「胡麻鯖」「ゴマサバ」「ごまさば」と表記はバラバラですが、脂の乗った真鯖(まさば)を、甘い醤油とみりん、そして胡麻で和えるだけ。薬味には海苔やネギやワサビや生姜などが使われます。
(写真提供:福岡市 まるごと福岡博多/福岡名物ゴマサバ)
「ごまさば」について教えて欲しいと
福岡市役所から電話がかかってきた
少し前になりますが、いきなり福岡市の広報の部署から電話がかかってきました。内容は「ごまさば」について教えて欲しい、と。とあるメディアが「ごまさば」について取り上げたいと調べていたところ、なかなかネット上では情報が拾えず、この謎が多い「ごまさば」について、福岡市へ問合せがいったそうです。
福岡市の観光情報の発信にもなるので、広報部署が各部署に「ごまさば」について徹底的に聞きまわったそうです。もちろん、長浜鮮魚市場にも。結果「よくわからない」ということになり、調べている過程でこのブログが検索でヒット!「あの岩永さんのブログじゃないか」となり、直接電話がかかってきた次第です。
で、「今のところ、このブログの記事が一番詳しいという状況です」と言われ、「えっ!?そんなまだ30代前半の僕が、ごまさばに一番詳しいことがあっていいはずがない!」と思い、僕自身も「ごまさば」に詳しそうな人を当たりました。
過去の記事:福岡最安のごまさばが美味い!
結果、僕はごまさばに一番詳しいようです
僕自身、各方面に当たりました。30年以上前に「魚の卸し」で起業して、日本で一番「アジ」の加工をしている会社の社長さんなら、まさに長崎の松浦漁港で揚がる「マサバ」の扱いも非常に多いので聞いてみたところ・・・「よくわからない」と。
ただ、この会社の方から以下のような情報をゲットできました。
日本海側のマサバは太平洋側のマサバより寄生虫のアニサキスの種類が違い、太平洋側のマサバは身にアニサキスが付くので、刺身はとても危険で食中毒起こしやすいが、日本海側のマサバは内臓にアニサキスは付くものの、身に付く確率が0.1%程度でかなり安全で「北部九州で生のサバを食べる文化が育った」という数年前の新聞記事。
でも、魚の、しかもマサバの卸しを長年やってきた会社ですら、この料理「ごまさば」が郷土料理と呼ばれるまでに広がった理由については「よくわからない」ようです。
いったいどこが発祥なのか?
なぜ広まったのか?
が謎の料理なのです。
で、僕は自分の仮説も合わせて、自分自身のネットワークに問いかけました。
僕の仮説は、
「交通網の発達:福岡から長崎県松浦港の時間的短縮」
(松浦港がマサバの水揚げは日本最大級だから)
※ちなみに松浦港が整備されたのも1980年代
「福岡都市圏の人口増加に伴う、飲食店の増加」
「インターネット&SNSの登場による、“ごまさば”の口コミでの認知拡大」
「甘い醤油がとても合い、簡単に作れる料理なので漁師料理として誕生」
(漁師は獲れた魚でまかない飯を船の上で作って食べたりするから)
です。
そして自分自身のネットワークに問いかけて、多くの方から「想い出」や「書籍」等の情報を提供いただけまして・・・
・昭和60年の福岡紹介の雑誌の郷土料理紹介ページには記載なし
(もちろん昭和50年代の雑誌にも登場せず)
→つまりこの頃は、郷土料理として居酒屋メニュー的に普及はしていない
・40代と50代の方が、子どもの頃に家庭料理として出されて食べていた
・現在80代の唐津出身の女性は、唐津では「ごまさば」はなかった
・福岡県は醤油屋が多い
です。
これらの情報をまとめてみると、なんとなく「甘い醤油」は港に近いほど甘くなりますから、やはり漁師料理として誕生したものが自然と広がり、家庭料理や居酒屋メニューなどでジワジワと広がっていたところに、マサバの大量供給が可能になってきてどんどん広がっていった、です。
ちなみにゴマサバというサバの種類もあります
料理のごまさばにはサバの種類として「マサバ」が使用されますが、実はサバの種類に「ゴマサバ」があります。食べ比べるとわかりますが、「マサバ」は身がしっかりしていてかつ脂が乗っています(とくに11月~2月ごろが最高!)。一方で「ゴマサバ」は身が崩れやすく、脂があまり乗ってないので刺身や生食としての利用はとても難しい、というかほとんどないです。
そんな福岡の郷土料理に育ってきた「ごまさば」、まだ食べたことがない!という人は冬にぜひ!そして主に長崎県の沖合い、五島沖や対馬沖、済州島沖などで獲れる「マサバ」が最高に脂が乗っていて美味いですので、産地にもこだわって食べてみて欲しいですね★
正月なんかは天然真鯛よりgあたりの単価はこの産地のマサバの方が高かったりしますから!