どのような“コミュニケーション”をとったら、人はどのような感情を抱き、どのような振る舞い、もしくは行動を起こすか?これを考えることが自分の仕事の全ての土台である。
コミュニケーションをデザインし、組み立て、企画や研修やイベント、広報物などのアウトプットをする。そのため、イベント企画&広報・まちづくり・地域活性・教育・人材育成・経営支援と幅広い領域の仕事をしているように見られるが、全ては「コミュニケーションのデザイン」と言える。
コミュニケーションデザインの土台となる思考?
社会人最初の5年間、就職氷河期で内定なく卒業した自分は、広告の企画制作アシスタントというアルバイトからキャリアをスタートさせた。そのときの貪欲さと、読書や先輩方に教えてもらった「視点」が、やはり自分の思考の蓄積になっていると思われる。
それは…
「あらゆる人が企画したものは、その企画の意図を探る思考」
例えば、TVCMを見たら「なぜこの構成?なぜこのタレント?なぜこのメッセージ?」などを考えてしまう。
例えば、スマホでとあるサービスの会員になるときも「なぜこのUI?なぜここだけこのデザイン?なぜここにボタン?」など。
要するに企画してデザインしていく人がどのような意図で“そうしたか”を、見てみたくなる思考だ。
日本有数のテーマパーク“USJ”に行ってきた!
前置きが長くなったが、10月は子どもたち念願のUSJに行ってきた。親戚とその子どもたちも一緒の11人による旅行だ。実はテーマパークという、「作られた空間で機械的なものに乗って、自由を奪われ非日常を体験すること」にあまり喜びを感じない性格でもあったので、USJは行ったことがなかった。(単純に子どもの頃から絶叫系が苦手だったので、避けてただけとも言う!)
せっかく集まっての旅行なので、関西でもう2日ほどみんなで(子どもたちが楽しく)過ごせるところに行こうか!?となった。
自分の中では、USJに娯楽としての期待値はあまり高くなかったこともあり、ある点と点が繋がった。それはUSLをV字回復させた希代のマーケッターである森岡毅氏(現在はUSJ退社して、株式会社刀というプロデュース会社の代表をされている)が、同じく関西エリアでV字回復させたテーマパーク「ネスタリゾート神戸」の存在である。
「ネスタリゾートというのがあって、そこに行ってみたいんだよね~」と家族・親戚に提案し、誰も知らなかったが提案が通り、なんとUSJの次にネスタリゾートに行くという、テーマパークのハシゴ体験、しかも森岡氏が両方とも手掛けているという森岡毅テーマツアーになった!
ネスタリゾート神戸とは、2015年に営業終了した「グリーンピア三木」の跡地を、リニューアルして2016年にオープン。それでも赤字続きで2018年より森岡毅氏率いる株式会社刀が入り、「大自然の冒険テーマパーク」へ変貌し黒字化。
※ネスタリゾート神戸を知らない方はこちら(HP)を参照ください
企画目線で見る「神は細部に宿る」!?
かたや、世界的ブランドのアトラクションがある都市型テーマパーク
かたや、ノーブランドの体験型アトラクションと温泉の山間部のテーマパーク
どちらも、森岡氏が手掛けてV字回復させたというテーマパークのハシゴ体験。この対比がすごく良かったのは言うまでもありません。
まずはUSJ!
圧倒的な世界的ブランド(マリオとか、ハリポタとか、ミニオンとか、鬼滅とか)で集客し、資金力による高いコンテンツ(常に企画を打ち出している)で“非日常”を提供している。都市型であり、アクセスがすごく良いので凄まじい来場者の多さ!朝7時前から入場門に長蛇の列ができ、本来朝8:00開園となっているのに7:00には開園するハイシーズンに行ったこともある。おかげで行列の待ち時間で疲労が…(長女ずっと抱っこしたし)
しかし、細部にまで行き渡ったデザイン、各エリアごとの建物のデザインに内装、外装・内装の素材・質感、スタッフの制服もエリアによって全部違う。いかに「アニメや映画の世界に“没入”させるか?」という視点でデザインされているであろう、細かいところも人の魂が込められている感覚を得た。(触れる外装・内装をベタベタ触ったり叩いたりしてしまってました)
次にネスタリゾート神戸!
ネスタは元グリーンピアだけあって、兵庫県三木市の山地にあり、周辺はゴルフ場も多い山間。「自然しかないんじゃなくて、自然がある」という森岡氏が言う「逆手に取った戦略」を体現したような高低差を活かしたテーマパーク。なので、「自分の身体こそが資本」として五感で非日常を揺さぶってくる体験を提供。
敷地は非常に広く、周遊バスが朝8:30から17:30くらい?まで20分に1周ペースで回っている。バス停はホテル前駐車場を拠点に、4カ所それぞれ体験型アトラクションがあるエリア等を回るようになっている。そのバスが2階建てで、子どもたちはその2階の一番前に座るだけでも席の取り合いになるほど、アトラクション感があり楽しそう。
そんなネスタもマーケティングがしっかり入って黒字化したというくらい土日祝は人が来ているのか、各アトラクションの「待ち時間」があるくらい人がいる。何より1つ1つのアトラクションが、自然を相手にしているため「安全面」を徹底するため、その設備や安全確認、スタッフの説明などがしっかりあり、時間がかかるのも理解。USJなどの説明とくになく、「安全面」を機械に任せてるのと真逆な印象。
子どもたちから体験の印象を聞くと、大きなボールの中に入って(水が入っているので、水着を着てびしょ濡れになりながら)谷を転がっていくアトラクションや、アスレチック系の落ちないようにワイヤーを引っかけて6mほどの高さを渡っていく、スリル感あるアトラクションなどが良かったそう。
自分としては、おもちゃの銃(スポンジの銃弾)で3チームに分かれて1つの砦を奪い合う(旗を揚げ合う)ガンバトルが、子どもの存在忘れて相手チームと必死で撃ち合うなど「アドレナリン」が出るのがしっかり体感でき、なるほどなーと。なので、親として子どもたちと同じ目線で同じように体を動かしながら体験できるという無二な体験は非常に価値があるなと。
そのようにネスタリゾートはその立地をいかに生かし、「企画」と「没入感」によって非日常の体験とするか?を提供している。森岡氏が話している動画を見ると「投資するお金がないから、いかに投資少なく体験型アトラクションをつくるか」という視点で作られているかも非常に感じられたテーマパークだった。
観光ビジネスとしてのテーマパークのあり方!?
今回はいち消費者として家族+親戚で、都市型×世界的ブランドのコンテンツのUSJと、地方山間型×ノーブランドの体験型コンテンツのネスタリゾートと、コンテンツの企画目線、施設の運営目線、地方経済の観光ビジネス目線で体感できたことは非常に勉強になった。
どちらも良いが、資本主義経済においてはUSJが勝者。やはり都市型で世界的ブランドのコンテンツによる集客力は凄まじく、それによる入園料や待ち時間気にせず乗れるエクスプレスパスなどの企画商品の充実具合、都市型にも関わらず大阪の港湾エリアに「まちを1つ作った」くらいあるユニバーサルシティ駅とその周辺が、1つの商業ゾーンとして経済が回る仕組みは、観光ビジネスとして世界で競い合う「都市間競争の一部」になっている感すらある。さらにこの人材不足時代を迎えた日本に置いて、比較的若い人材を常に確保しやすい立地にあるのが何よりも優位性が高い。
一方のネスタリゾートは、その「企画力」と「没入感」の演出による五感を使った体験型コンテンツは、USJと違った充実感ある「疲れ」もあり、個人的には非常に好きだし次はプールが稼働しているそこまで暑くない時期にまた行きたいと思った。しかし、消費者としては「ネスタリゾート」的なテーマパークは山間部の多い、温泉もあるようなエリアでは真似が出来てしまうため、また世界から集客できるわけではない「域内マーケティング」によって集客する観光地。なので、その地方の人口(ネスタリゾートの場合は、関西圏+中国・四国地方の一部)に依存してしまう上に、周辺にはネスタリゾートと組み合わせて行ける観光地が少ないため「それを目指していく」必要があるという、ブランディングが肝になる。
さらに運営面において、スタッフが「安全性」を担保するための学習・研修への投資が必要なうえに、山間部であるため「人材確保」が最も難易度を高くしてしまう。人口7万人ほどの三木市にとっては、ネスタリゾートは観光としての大きな看板+税収に繋がるため応援しないといけないのだろうが、人材については今後どんどん難易度は上がりそうだし、他の地方自治体が真似して良いスキームとは言えない。
そしてここ九州には、地方のアクセスがあまりよくないハウステンボスが最大のテーマパークとして存在し、HISが経営に入ってからはV字回復も、コロナ禍によって撤退。2022年秋から既出の森岡氏率いる株式会社刀が運営に入っている。
※参考 : 刀社はハウステンボスのブランディング・運営支援を開始
2023年秋にこちらも家族で体験したときに、「10年くらい前のハウステンボスと変わったなー」と感じるくらい良くなっていた。福岡に住むものとして、「日帰りないし1泊で行くようなところ」という印象が強いので、今後のマーケティングや佐世保市とともに地域ブランディングによって「最低でも1泊、良ければ2泊3日行くと最高の非日常がある」という書き換えをしていかないと、ハウステンボスの良さは味わえないし、地方型のテーマパークとしての観光ビジネスの成功は難しいようにも感じる。
もう1つ、森岡毅氏や株式会社刀を知らない方もいるだろうから、この方々が現在手掛けている大きな案件が、沖縄の新しく作っているテーマパーク「JUNGLIA ジャングリア」。沖縄の美ら海水族館のあるエリアに近く、名護市の左上に位置する立地。元ゴルフ場だったところに、新しい宿泊型テーマパークを2025年OPEN目指して作っている。
※参考 : JUNGLIA ジャングリア
ここは地方山間型のノーブランドながら、「世界から集客する」ことを目指しているような発言が森岡氏のプレゼンにあるくらいなので、集客のターゲットがネスタリゾートやハウステンボスとはまた違うだろうし、コンテンツをどのように展開するのだろうか。このジャングリアが、周辺地域と絡めた観光ビジネスとして、人材不足時代の地方の観光ビジネスとして、どのようになっていくのかが非常に興味をそそられるところ。
最後に、USJがV字回復しネスタリゾートの存在を知った動画が、日曜日の初耳学のこちら
それとNEWS PICKSが2023年に出した森岡氏の独占インタビュー動画もオススメ。