2020年が始まり新しいことが次々に沸き起こっていました。前回より約2カ月も空白が続いたのは、登壇系の講師やファシリテーターの仕事がかなり入ってしまい、ほぼ時間的余裕のない2カ月を過ごしていました。
そんな中、2月12日(水)に福岡テンジン大学と西日本鉄道、いわゆる「にしてつ」さんとコラボレーション授業『[おとなの社会科見学] さよなら天神コア!グランドフィナーレを迎える商業ビルの物語を体感しよう』を開催しました。
冒頭の写真はそのときのもので、ギンギラ太陽’sの大塚ムネトさんが取材参加されていたので撮影したものです(大塚さん、表紙的に使ってすいません!)。2020年3月後半に、西鉄ホールで公演される「天神コアさよならスペシャル!解体と共に去りぬ」が予定されていて、そのときに福岡テンジン大学も協力をするので、それで大塚さんに来てもらいました。
企画の背景
そもそも今回の企画は、西鉄の担当の方と「天神コアが閉館するので、それを悲しい閉館ではなく、前向きな閉館、生まれ変わるということをポジティブに伝えたいですよね」というところから始まりました。
僕は企画を立てるときに大事にしているのが「なぜ、それをするのか?」を徹底的に深掘りし、社会や街と文脈を繋げて言語化すること、です。そして「ユーザー目線」。こんな目線からなら、楽しめるだけでなく、新しい発見もできるし、誰かに言いたくなる、そんな目線からイメージを企画に落とし込んでいきます。
このコラボレーション授業の肝は「夜の営業終了時に、シャッターが閉まるところを、天神コアの中から見る。そしてそれを参加者たちと共体験する。」です。
普通に考えたら、「えっ?そんなのの何が良いの?」かもしれません。実際に、西鉄の方からも天神コアの方からも同じリアクション。でもこれが「ユーザー目線」からの企画なのです。
今回の参加者は「天神コアにどことなく思い入れ(想い出)があり、なんかそれを他者と語ってみたい」と思っている方々に設定。想定していた30~40代が本当に多く申込をしてくれました。
そしたら、告知を見て定員の3倍以上の申込が来ただけでなく、RKB毎日放送「今日感テレビ」から取材の依頼が。
特集コーナー「さよなら天神コア」として約20分近く、天神コアの閉館を扱ってくれ、その中でも15分近くも今回の授業についての取材が放送されました。
授業のラストシーンがシャッター降りるところ!
約2分の動画です。
このラストシーンに至るまでは、館内バックヤードツアーを行い、その後に参加者同士が天神コアの想い出を語り合って、ゲストとして20年間も天神コアのショーウィンドウのディスプレイデザインを手がけた方のお話を聞きました(しかも天神コアの閉館とともに引退される)。
それもあってか、このラストシーンで印象的だったのが「シャッターが下り終わった瞬間の数秒間の沈黙」です。僕はこの瞬間、なんとも言えない言葉にできない、いろんな感情がワ~っと沸き起こりました。
そしてどうやらそれは、他の参加者の方々にも起こっていたことを知りました。
まちや不動産に愛着が生まれる要素とは
これまで多くのまちづくり的な活動や仕事をし、地域活動の講演やワークショップもしてきました。その中でも大事なキーワードが「愛着」や「誇り」だったりします。これがあるだけで、市民が消費型から参加・参画型になり、それが市民の健康度や幸福度を高めたり、治安を良くしたりと、まちや不動産の持続可能性を高めることを様々な論文や書籍で見てきました。
ではこの「愛着」はどこから来るのか?
今回の天神コアでの企画を紐解くと、「想い出がある」「人の営みが想像できる」から「語れる」ことになります。この「語れる」を、より他者と共有しやすい環境をつくっていくと、相乗効果からより「感情が動く」現象がわかりました。「対話型」の授業や会議が生産性高いのと関係がありそうです。
この「語れる」というのは「言葉にできる」ということ。言葉の裏側には膨大な情報や感情やそれにいたる文脈が人ぞれぞれある、というのが大事なポイントだと思いました。
これは、人生今まで何も関係のなかったまちや不動産に行っても、まだ何も愛着形成できないのに、そこに何か1つでも関係性が見つかると「愛着が形成される」ことになります。その関係の糸の本数がどれだけ多いかが鍵。つまり、これまで関係がなかったと思った、とあるまちのとあるビルが、「実は祖父が建築設計した」という事実がわかったり、「実は恋人が幼い頃によく遊んでいた」などの関係性の糸が繋がると、急にそこが大事な場所に感じ始める感情の動きと言えます。
今回の天神コア企画では、それが如実に現れていたことがわかりました。
天神ビッグバンの建替え後の鍵は!?
ということは、天神コアはじめ、VIVREと福ビルをセットに建替えられる「新福ビル」に、人の愛着をどう作っていくか?は基本的にゼロリセットとなるはずですが、「愛着を引き継ぐ」というスタートダッシュも可能だということです。福ビルや天神コアやVIVREの名残を「物理的にどこかに存在させる」、それがスタートダッシュの鍵になるやもしれません。
先に閉館したVIVREについて、SNSで年齢1つ上の知人が「名代ラーメン」について、あたかもその店が誕生したときから知ってたかのように、名残惜しく語っていたのです。「名代ラーメン」はVIVREができる前の因幡通り商店街時代からのお店で、VIVRE44年間よりも歴史は長い。彼はまだ39歳だから時間軸はおかしい、だけどそれだけ深い愛着が形成されているのは、「物理的に存在している」から語れるんです。
きっと、VIVRE前から「名代ラーメン」を知っている人もVIVREの閉館は、また大きな感情が動く出来事でもあったと思います。そうです、世代関係ないんです。
これから激変を迎える天神ビッグバンのある天神ですが、WeLove天神協議会が設立された当初(2006年)から参画し、WGリーダーを務めている身としても、天神というまちがこのような「繋がり」や「愛着」をどう未来へ繋げていき、持続可能なまちづくりをしていけるかを、これからも提言し行動していきたいと思っています。
2020年5月中には、天神まちづくりガイドラインも改訂(今それに向けた意見交換とかを続けてる)されるので、今後の天神にこうご期待!