SDGs

セクシャル・マイノリティ

友人に杉山文野(すぎやまふみの)という、性同一性障害の男性がいます。去る6月、北九州に彼を呼んで、少しだけ話をしてもらうイベントを企画しました。

 

 

北九州市がここ数年、毎年やっているラジオ番組「明日への伝言板」という、人権問題に関する番組があるのですが、その中で今年の目玉は特別番組があることです。大学生たちが自ら企画して取材し、それをもとにラジオ番組のシナリオを考え、かつ出演してそのことについて話すというもの。その取材相手として、東京から杉山文野(以後フミノ)氏に北九州に来ていただきました。

 

僕が現在、北九州市立大学の特任教員として、小倉魚町にある「北九州まなびとESDステーション」という、北九州市内の10の大学の学生たちが、「地域活動を行うための拠点」で、その地域活動を教育プログラムとして提供する先生をしています。その地域活動の中の一つが、今回のテーマを扱うガーベラプロジェクト。男女共同参画を若者にも認知拡大するために、市の男女共同参画センター・ムーブと一緒になって、イベント企画したりなどしています。

 

 

佐藤さん、鈴木さん、田中さん、高橋さんの知り合いはいますか?

上記の名前の知り合いはいますか?

この4つの名前は、日本国内にいる日本人の中で、多い苗字上位の名前。合計約660万人ほどいるそうですが、知り合いとなると「いない」と答える人がいないくらいメジャーな苗字ですよね。実はLGBTと呼ばれるセクシャル・マイノリティ(性的少数者)の人口の出現率は約5%で、上記4つの苗字の方々の数くらいいると言われています。

 

あ、LGBTってナニか、って?

 

LGBTとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの頭文字をとったもので、性的に少数派と呼ばれる方々の総称みたいなものです。

 

 

え?

佐藤さん鈴木さん田中さん高橋さんはいるけど、LGBTの知り合いはいないって?

 

 

最近はLGBTの方々もTVやタレントの影響もあったり、イベントがあったりと、表現というか、カミングアウトしている方も多くなってきていると思いますが、これら「心の性別」みたいなものは目に見えません。そのため、なかなか自分から言ってもらわないとわからない、気づかない、というのが実状じゃないでしょうか。

 

 

性別って男性・女性の2種類じゃない、56種類ある?

フミノと出会ったのは2006年だったかなぁ、フミノがグリーンバード歌舞伎町チームを立ち上げた直後に、福岡に来る機会があり、同い年ということもあり意気投合、その後、僕が東京に行くときは実家に何度も泊めてもらったり、一緒に四国を旅行したり、一緒に温泉にいったり(もちろん2人とも男湯に入った)と、なぜか仲良しです。そんなフミノですが、昨年より東京レインボーウィークというイベントの代表もやっていたり、LGBTの世界では超有名人で、6月に東京に行った際、会った瞬間にいきなり「このあとNHKに出なきゃいけなくなってさー、文科省のLGBTの調査結果の報道で、コメンテーターとして呼ばれて~・・・」と、小一時間いなくなったり。NHKはもちろん、著書「ダブルハッピネス」という本を出してから、全国的に知られるおなべ界のプリンスです。

 

彼がまだ手術する前、女性として生きていた当時、フェンシングにハマり、女子フェンシング日本代表にまでなっています。だけど本人がちょっとふざけて言うには「なでしこジャパン」ではなく・・・「なべしこジャパン」という自己紹介が、彼の話しやすさを作っています。

 

 

sugiyamafumino-seibetsu

これはフミノが早稲田の大学院生時代に研究して作った「性別一覧表」。フミノが言うには、性別はまず「身体の性」が3種類、男性と女性と、生物学的には両方の性器や染色体などを持った第3の性があるそう。次に「心の性」、俺は男性だ!とか、私は女性よ!とか、自分の心がどうなのかという性。これにも実は第3の性、両方あるけどどっちか1つではない!みたいな人も実際にいます。最後に「好きになる性」です。男性が好き!女性が好き!そして両方ある人が好き!というもの。

 

性別が男性と女性しかない、と思っている人にとっては衝撃的な話で、そう簡単に受け入れられるものでもなく、「それは趣味趣向の話じゃないの」と思われる方も多いです。だからこそ、自分の子どもがこのLGBTだったりすると、「あなたはおかしい」とか「あなたを産まなければ・・・」など、我が子を傷つけてしまうことも多いそうです。そのため、カミングアウトができないでいる人もたいへん多いそうです。

 

 

実は僕の知っている大学生に1人、このLGBTの子がいて、その子の発言がおもしろかったというか、たいへん印象に残っています。

 

 

「自分は、⑦から⑨をウロウロしてます」

 

 

というのです。

性別が27種類ある、というのだけでもけっこう衝撃ですが、さらに横断しているというのは、もっと衝撃でした。でも、ありえるな、と思ったのです。フミノの性別一覧表は、3×3×3=27の27種類ですが、1~27の整数ではなく、小数点の領域に分類される人がいてもおかしくないな、と思ったのです。さらにその子から今日聞いたのが

 

 

「アメリカのFacebookでは、性別が56種類あるそうです」

参照:米フェイスブックがユーザーのプロフィールに56種類のジェンダーを追加(ReadWrite:2014年2月14日) 

 

 

日本のFacebookではまだ2種類ですが、やはりアメリカは進んでいますね。しかし日本でもようやく、この多様性を受け入れ、カミングアウトしても仲間がいる、理解してくれる人が増えてきている、という環境ができつつあるようです。

 

 

レインボーパレードがいよいよ福岡でも?

フミノから、「福岡の学生がこんなこと企画してるよ」と送ってもらった情報が、福岡大学の学生が、今年の秋にLGBTの人たちによるレインボーパレードを企画しているようです。その名も「福岡レインボーパレード2014」。

 

東京では昨年より、ゴールデンウィーク期間をレインボーウィークと定め、いろんな催しをする大きなイベントが始まっており、海外でも、レインボーパレードのようなイベントが広がっているようですが、ここ福岡でも開催されるというのは大きな進展ではないでしょうか。

参照:東京レインボーウィーク2014

 

世界的に見ると、実はLGBTをまったく理解しようとしない国、ましてや犯罪や死刑になる国もある一方で、この多様性を受け入れ、個人の人権として受け入れようと法律改正が進む国もあります。ここ日本では後者の方です。いまでこそダイバーシティという言葉が出てきましたが、それでもまだまだ凝り固まった価値観で、物事を判断してしまう人が多いのも事実。そうゆう人もいるんだ、そりゃいるよね、当たり前だよね、という「認識が広がる」だけでも、セクシャル・マイノリティだけでなく、いろんなマイノリティの方々が住みやすい国になっていくのだと思います。

 

 

当事者は身近にいる

こんなことを書いたり言ったりすると、あいつもそうじゃないか、とかいろいろ叩かれたりもするそうですが、僕は性別一覧表で言う13番です。ですが、僕の知人・友人の中に、佐藤さん、鈴木さん、田中さん、高橋さんは、合計20人以上います。目には見えなくても、実はLGBTの当事者たりえる人は世の中にたくさんいます。ちなみに、血液型がAB型の人も、約5%ほどの人口だそうですよ。

 

このフミノを呼んだイベントは、直前に告知をしたにもかかわらず、25人ほどが参加して、今まで見たことがある大学生もちらほら参加していました。「当事者なの?」と聞くと、「友人にレズビアンがいて~」とか、「彼氏がバイセクシャルなことを付き合って半年で告白されて~」とか、さらに社会人の当事者の方もいて、むしろ僕みたいないわゆる普通だと思われていた人の方が少数派なイベントになっていました。

 

そのため、イベント後の交流会で「どれですか?」って聞かれて、なんて言っていいか言葉に詰まりました。「普通です」という回答は、回答になってない、と思ったのです。僕は普通なのか?このLGBTの当事者や、当事者を知人・友人に持つ人たちがいる場では、僕は明らかに少数派だから普通ではないよな?と。それを聞いてきた方は、軽く「あ、私はレズです」と答えてくれました。この場では、誰もがカミングアウトしやすい、そんな空気になっていて、僕のようなもともと多数派だと思われていた人が、「普通です」って言えない空気になっていたのが、ある意味とても新鮮でした。

 

 

地方の男女共同参画はまだまだ未開拓?

大学生たちは今回の取材からシナリオ制作にかけての段階で、いろんな価値観や当事者たちからの話に触れ、セクシャル・マイノリティ以外にもデートDV等を扱っているため、価値観が大きく揺さぶられ、考え、心の成長が見えます。義務教育の中でも教わらない、こんな機会がないとなかなか理解も受け入れることもしにくい、そんな分野もあるのです。

 

各自治体には、内閣府管轄の男女共同参画なるものが部署と予算がついて存在していますが、このセクシャル・マイノリティも、その中に入っているはずなのですが・・・。そもそも「男女」という言葉でくくっている以上、セクシャル・マイノリティについて扱っているイベントなどをやっている自治体や地域はほとんど聞いたことがないです。

 

とくに、公民館などの男女共同参画の方々ともよく話をしますし、福岡市役所の男女共同参画の方々とも話をしますが、セクシャル・マイノリティについての話はしたことがないです。あれ?担当部署は違うのでしょうか?(調べてみると、ちゃんと男女共同参画が扱う分野っぽいです)

 

とある福岡市内の校区の、男女共同参画の会長さんや、福岡県の男女共同参画の市民代表みたいな方にもセクシャル・マイノリティを扱っているか聞いたんですが「まだ一度も~・・・。そのようなテーマも扱わないといけないんですが、まずは女性の~・・・」とのことでした。男女共同参画が目指すものはダイバーシティ、いわゆる多様性を受け入れていくこともあるので。そんな福岡でも、初のレインボーパレードが秋に開催される(しかも大学生が企画プロデュース)ので、今後動きがありそうですね。

 

若者のチカラで、新しい風がまたひとつ、吹きそうですね。

 



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