プロデュース・マーケティング

アドテック九州とこれからの広告

世界11都市で開催される世界最大級のデジタルマーケティングのイベントで、2013年より福岡でも開催されるようになった「ad:tech kyusyu(アドテック九州)」に行ってきました。

 

なぜそんな世界11都市でしかやってないようなマーケティングのイベントが福岡で?

日本の中で「通信販売」の会社が多く、切磋琢磨する中でマーケティングの技術や手法がどんどんと磨かれてきたのがこの九州という土壌。そのため、日本では東京と大阪とここ福岡の3カ所でしか開催されていません。今年で2回目で、昨年は行けなかったので行ってきました。日本中のデジタルマーケティングに関わるビジネスマンが注目するこのイベントは、3分の1がやはり関東方面からの参加者だそう。ビジターという無料でいくつか講演を見れるものと、プレミアムという有料でレベルの高い講演を見れるものとあります。午前中はキーノートセッションといって、無料でも見れるものがあります。その中でも紹介されていましたが、九州の通販会社における「WEB担当者」の数の平均は6.8人で、他の地域の約2倍ほどの人員が配置されているそうです。それくらい、九州は「通販王国」なのです。

 

ちなみに、通販におけるマーケティングでは「ダイレクトマーケティング」という手法が取られますが、WEBが登場してからこの分野を通販会社と広告会社がタッグを組んでこの15年くらいやってきたわけです。その中でもおそらく日本のトップに君臨しているのが加藤公一レオさん。もともとADK(アサツー・ディー・ケイ)の福岡支社にいて、九州の代表する通販会社と実績を作ってきた方です。

 

僕がサラリーマンを辞める前に紹介してもらい、初めてお会いしたのはたぶん6年くらい前。レオさんが出版した「売れるインターネット広告」という本をそのときいただいたのですが、その本は大人気で今では絶版、Amazonで中古でも高値(¥1500が¥8000以上!)で取引されているというくらいの・・・。

 

レオさんは独立して5年ほどで、今では日本のナショナルクライアントの通販を多く手掛けており、かつ売上を何倍にもしてきているプロデューサーです。

 

アドテック九州2014

 

2014年のアドテック九州のカタログです。

テーマは「ダイレクトマーケティング戦国時代」。

 

僕はもともと広告の仕事をずっとしていて、ネット広告の仕事も少しした関係で、レオさんと繋がっていたこともあり、実はテンジン大学もレオさんが独立して作った会社「売れるネット広告社」に、設立支援サポーターとして資金的支援をいただいたのです(その節はありがとうございます!)。会うととても気さくに笑顔であいさつしてくれるレオさんは、広告業界では異端児的印象?というか、いろいろと業界を煽るような発言をています。

 

例えば・・・

今の『ディスプレイ広告』の枠ってクズだよね!

 

しかしレオさんは、当時からお話を伺っておりましたが、相当な努力家で統計家です。人間の心理的な統計を駆使して、ネットの世界でとことんA/Bテストと呼ばれるものを行い、「効果が高い」広告を展開してきました。おそらくこの実績は、世界的に見ても例がないんじゃないか、と思えます。生物の、人間の、視覚や触覚など五感による脳の働き・・・脳科学の世界じゃないかと思えるような、人類の心理的な動きをネットという媒体を使って数値化してきているため、僕の中ではニュートンで記事になってもおかしくないレベルだと思ってます。

※ここで言うA/Bテストとは、HPのとある1ページにおいて、すべて同じ条件で同じアクセス数の中で「写真だけを変えたもの」「キャッチコピーだけを変えたもの」「“申込む”のボタンの色だけを変えたもの」など、どちらがユーザーのアクションに繋がるかを統計的に図ったもの。

※キャッチコピーを変えただけで2~3倍の違いが出ることも!

 

ですが、日本の、世界の、広告の主な予算はいまだにマスメディア(TV・新聞・ラジオなど)に使われており、そこには結果論としての数字は出てますが、ネットほどのA/Bテストは実施されておらず、デザイナーやコピーライターやカメラマンなどの腕一本で勝負する世界だったりします。広告代理店が組んだチームで企画を考えて、クリエイティブをつくって提案、提案された広告主の担当者や重役や社長さんの「独断?」でCMが採用されたりする世界ですね。

 

そんな中、レオさんが独立後から手掛けて今回リリースしたのが、そんなマスメディアの広告でも、「A/Bテストができる」、「ネット上でその広告をA/Bテストしたら、実際の広告でも同様の結果が出る」という、これまた統計に基づいたサービス(システム)を構築しています。(4年間かけて実験した結果、というのがこれまたすごい)

 

レオさん曰はく「統計により広告が選ばれる時代」が始まったわけです。

そのサービスはこちら→ https://www.ureru.co.jp/#service05

 

TVCMも新聞広告もチラシも、あらかじめテストで効果が高かったものが世の中に出る。経済効果は抜群です。今までの広告予算で効果が上がるから、お金が動く量が増えます。おそらく今後多くの大手の広告は、統計による選ばれた広告が登場していき、比較的大手の広告から選ばれていた広告の賞は消えていくのかもしれません。

 

 

じゃあクリエイティブは仕事が減るのか?

デザイナーはどうすればいい?

コピーライターは?

プランナーはどんな企画を立てればいい?

今までの仕事が、ある意味否定されるかのような衝撃です。

 

 

こんなレオさんみたいな人がまず福岡にいて、福岡を本拠地に広告業界に変化をもたらし続けている事実がすごいですね。しかし、すべての広告がA/Bテストできるとは限らないと思っています。さらに、会社や商品によってはブランドイメージという、人々が持っている印象から、テストができなかったり、そもそもダイレクトマーケティングのコテコテの手法ができなかったりする会社があることも、今回のアドテック九州の中のセッションで話が出ており、落ちていくところはアナログなところだなというのを示してくれました。

 

デジタルなマーケティングと言いながら、確かに技術や手法は日々磨かれていますが、広告の相手はやはり“人”ですし、それを生み出すのもまた“人”です。統計を少しでもかじっている人であれば、AかBかの傾向を図るもので、0%と100%という数字が出たら「おかしい」と思えるのは当たり前。算数レベルでない、微分積分レベル以上で傾向を図る統計の世界では、100%がありえないように、そもそも生物には多様性がDNAとして備わっています。それは、突然変異を受け入れる余白を常に残しておくことで、種の保存をして、進化してきた歴史がそれを教えてくれています。その「余白をどれだけ残すか」、「どんな突然変異を受け入れるか」は、統計ではなくクリエイティブの仕事だと僕は思います。

 

140712

 

冒頭でも載せたこの写真。先週の西日本新聞朝刊のテレビ欄の右上に掲載された広告です。このキャッチコピーを僕が作りました。

 

「信長も秀吉も認めた男の至宝展」

 

まだ始まってない、7月26日に向けてほぼ毎日、西日本新聞のどこかにこのキャッチコピーが掲載された広告が載っています。果たしてこれは、まだ始まっていないイベントの広告で、A/Bテストができるのか?

 

できないと思います。結果は、当日以降を迎えてみないことには・・・。

 

ちなみにこのキャッチコピー、仕事として担当したわけではなく、僕が単なる黒田官兵衛オタクだったため、「官兵衛をよく知らない人でも、“そうなんだ”って関心持てるキャッチを」という話を聞いて10案ほど考えたものの中の1つです。

 

 

広告にクリエイティブは必要ないのか?

広告業界を煽っているレオさんですが、実際にお話すると、そんなことはお見通しというか、かなり勉強家・努力家なのが話したらわかりますし、これらダイレクトマーケティングと、クリエイティブは対立構造にあるのではなく、統計がある程度決めてくれるその上に、クリエイティブが発揮されるというのを、レオさん自信もよく理解している、と感じています。クリエイティブなアイディアがあるからこそ、統計でさらに磨かれる、ということが今回のアドテック含めて、僕が感じたことです。

 

結局は、人なので、アナログに戻ってくる。

 

そんな感想を友人とも話していました。今回のアドテックは福岡の広告・通販系の知人がたくさん登壇していて、それを聞くのもとても楽しかったです。その中でお一人、お話は聞けなかったのですが、たまたま休憩されているところに出くわして「お久しぶりです!」と話せた方がいました。

 

消臭力~♪のCMでおなじみ、エステーの鹿毛さん。「おぉ、テンジン大学は順調?」と言ってくれた鹿毛さん、実はテンジン大学の名刺を持っていて「特命宣伝部長」という肩書きです(笑)使ってくれているのかわかりませんがw

 

今ではグロービスという経営大学院でも弁を取られている、CMでエステーの売上を上げていったプロデューサーです。その鹿毛さんが、西日本新聞の電子版qBizでアドテック九州のことについてインタビューされている記事がありましたのでご紹介です。

広告に「クリエーティブ」は必要ないのか?(qBiz)

 

テンジン大学もダイレクトマーケティング×クリエイティブ?

実はテンジン大学を立ち上げる前から、通販の仕事やダイレクトマーケティングの仕事も少しかじっていたこともあり、「テンジン大学そのものも、マーケティング視点から、授業への集客を容易にし、口コミで広がりっていくための戦略」をちゃんと構築して展開してきました。

 

シブヤ大学が2006年に立ち上がり、ナゴヤ・京都カラスマ・札幌オオドオリ・ひろしまジンなどなど、姉妹校の中でも7番目くらいに2010年開校ですが、抱えている登録学生数はなんと姉妹校を追い抜き2番目の4500人超え!(シブ大が圧倒的に多い・・・)。授業はほぼ9割以上が定員を超える申込で抽選になります。しかもテンジン大学を知った理由の1位は「友人・知人に聞いて」が35%ほどという、伝染力を持っています。

 

あんまりマーケティングの世界でもNPOの世界でも、注目されませんが(笑)

 



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