教育・人材育成

これから社会に出ていく若者たちに何を教えたらよいのか?

九州産業大学で「ビジネス入門」という必修科目の講義を受け持ち、計15回の講義を行い、採点をつけるところまで2年連続担当しました。今年度の受講生は約100名(昨年度は600名を超えていてしんどかった!採点が…)。毎回講義の最後に「問い」を出し、その場でレポートを書いて提出してもらいます。その「問い」の内容はすべて「正解のない問い」です。採点基準は、講義の内容を自分の中でどれほど抽象化して捉え、自分の頭で考えたものを言語としてアウトプットしているかどうか。回答はQRコードを配布し、スマホでアクセスしてスマホで記述し回答できるようにしました。

 

平成は教育が変わらなかった

インターネットの登場、スマートフォンというデバイスの登場、そしてSNSの進化により、これまでの「良い学校へ入り、良い会社に就職し、安定した収入と生活」が手に入るというモデルが、少しずつ崩れていっているのを肌身で感じています。学歴に関係なく挑戦し稼ぐ手段の増加、メンタルをやられることによる離職、一部の高学歴な大学を除いて、「学歴が高いこと」が安定した収入を手に入れるパスポートとして不十分な時代になってきました。

 

さらに変わる社会情勢や環境。日本や東アジアを中心とした破局的な少子化と高齢化。日本は今後20年間で約1,300万人の労働人口の減少に見舞われます。1980年代までの労働人口が増加し、総人口も増加し、インターネットもない時代の「正解が絞りやすく明確」だったときの成功モデル、いや、誰もがベルトコンベアに乗りさえすれば安定した収入と生活とマイホームが手に入るという人生コースが、非常に難易度の高いコースになってしまいました。

 

平成は教育が変わらなかった、がゆえに、「正解のない時代をどう生き抜くか」について、大人たちが学んでこなかった時代になってしまいました。その結果、今の大学生・高校生・中学生は、親や先生というモデルしか知らずに、またそれを否定することができずに、正解を求めて今日も宿題をやるのです。

 

 

正解のない時代に教育はどうあれば良いのか

日本の教育が変わろうとしています。文科省は数年前よりアクティブラーニングという言葉を導入し、学校における教育を変えようといろいろ模索してきました。が、学校の教育現場の最適化されたオペレーションの重力が重たすぎて、世界と比べてもICT化は遅れ、昔ながらの教え方で授業が行われています。

 

そこに2018年より経産省が本腰入れて取り組む動きが出てきました。産業界は人材不足が待ったなし、さらに現在の「正解がない、与えられない時代」に「課題を見つけ解決に向かえる」という人材の需要が高まる一方、そのような教育課程になっておらず、経産省が教育のEducationとテクノロジーのTechを掛け合わせた「Edtec(エドテック)」の社会実験「未来の教室」事業を始めています。

 

僕もその一環ってわけではないですが、福岡でGoogleのパートナー企業として機会学習(AI)によるビジネスサービスを展開するグルーヴノーツ社と英進館による主催の「未来の教室を考える」というトークイベントに関わらせていただきました。

 

 

「ビジネス入門」という名の「正解がない時代の学び方」講座

約10年前にこの世に登場したスマホ、Twitter、Facebook、LINE、Instagram、そしてYouTube。これらのものが世界の情報量を膨大にし、いち個人からの発信量を増やし、世界は猛烈な勢いで繋がりました。その結果、世界で何が起き、これから日本で何が起きようとしているのか?テクノロジーは何を変え、これから何を変えていくのか?その結果、人間はどんな仕事をして、どんな生活スタイルに幸せな感情を宿していけば良いのか?

 

誰もわからないながらも、全く知らないのと、この潮流を知り「自分の頭で考えて行動すること」と、それだけでも圧倒的な差が生まれるのが今の時代なのです。

 

ということで、ビジネス入門では「10年後、きみに仕事はあるのか」というサブタイトルを付け、徹底的に情報提供したあとに「問い」をぶつけ、言語化の訓練です。僕自身、前述のグルーヴノーツや、福岡市科学館のシンポジウムでAIやロボットの日本最先端の先生たちからお話を聞けたりと、良い人間関係に恵まれ、まちづくり分野でも地方創生で全国を行脚している木下斉くん、北九州市立大学の地域創生学群との繋がり、そして中学・高校生向けの教育プロジェクトで、イノベーション人材の育成を福岡市と7年間もやってこれたこと、広告・販売促進・広報などマーケティングがもともとの本業であること、そんな視点を全部混ぜ込んだ講義内容にしました。

 

それに加えてリーダーシップの発掘の仕方、コミュニケーションの理解と実践方法、さらにSDGsの現在地と世界の流れ。現役ビジネスマンもゲストで数名お呼びして「行動力」についてを可視化。いろんなアプローチを詰め込んだ15回で、「今、自分が大学生だったら学びたい」「今、我が子たちが大学生だったら絶対に知っていてほしい学び」にしました。

 

学生たちの最後の講義のレポートの「問い」は、「この講義で“なに”を学びましたか?その学びには“どのような”意味がありますか?“なぜ”意味があると思いますか?そして、自分の未来のために、今の自分に“なに”ができますか?」

 

こんな声が今年はありました。

 

私はこの講義を時間割の都合上いれており、始めは就活も終えていたので聞き流すつもりで出席していました。しかし、講義を受けてみて内容が凄く衝撃的でした。私は講義を受けていくうちに内定をもらっている会社を辞退しようと決めました。なぜなら自分で決めた企業ではなく人に言われて受けたため。なにを学んだかは自分のやりたい仕事をするということです。この講義で従来の考え方では将来私に仕事が無いということを学んだからです。

私はこの講義で何かを学んだというより、何冊かの本を読んだくらいの情報を得たと思いました。この講義を受けなかったら絶対に知らなかったようなことを知れたり、ゲストで来てくださった方々の思考も聞けたりと普段の自分からは触れない分野の情報を知れたのはとても良かったです。 このように、普段の自分では絶対に調べたり興味すら持たないものを知れるということは、それを知る前と知った後では考え方がまるで違うと思うし、幅も広がるので情報を得ることはとても大事なことだと感じました。

わたしはこの講義の中で自分の中にあるものをもっと外に出すこと、自分の考えや行動に自信を持つことを学んだ。今までの講義で話しにきてくださった方は皆さん自分がこう思うから動いてみよう、という人ばかりだった。勉強をあまり頑張っていなくても何か一歩を踏み出して行動を起こしている人は輝いて見えた。そしてさらに今日見た動画で話していた人にとても勇気をもらえた。わたしも無意識のうちにどーせむりと考えることがあったりして何もしなかった結果、もしかしたらわたしでもできたのかな、と後悔することがあった。どーせむりというのをやめてだったらこうしたら?と自分に問いかけてみようと思った。それだけで自分の考えが変わる気がした。

なぜかというと、これから自分が迷った時、判断に困らないからです。今の自分に出来ることは、これから迷った時は、行動を起こすことです。それが良い結果でも悪い結果でも、僕は行動を起こしたことによって、必ずなにかしら成長していると思います。この講義を受けて、理由はわかりませんが、とても前向きになれた気がします。また、考え方がとても変わりました。ありがとうございました。

 

これから社会に出る若者に何を教えるべきか?

僕にもいったい何を教えたら良いのか正解がないのでわかりません。10年後、今はまだ存在しないテクノロジーや課題が生まれ、それに向き合う仕事が生まれていることと思います。ただ、正解に近づける唯一の方法があるとしたら、「未来をつくる」こと。

 

お金を出せば手に入るものは「誰かが考えてつくったもの」にしか過ぎません。誰かが用意してくれた仕事をし、誰かが用意してくれたモノやサービスをお金を払って手に入れる、という生活スタイルは、おそらく今後ジワジワと水準を落とすでしょう。理由は、誰かが用意してくれる仕事ほど一般化され、単純化されたタスクとなり、AIやロボットに代替できる可能性が高くなるからです。

 

・自分の頭で考える

・正解を自分でつくる

・自己学習を自走させる

 

この3つこそ、今の僕にできる「これから社会に出る若者に伝えられること」として、それに気づいてもらうような設計をして講義を組み立てました。10年後、20年後、しっかり向き合ってくれた大学生たちと再会し、一緒に仕事ができたりしたとき、僕の蒔いた種が実になったと言えるかもしれません。

 

それ以上に、もっとこのような「場」が街のいたるところに存在し、社会に出てる出てない関係なく、学び合いがおこる状態を目指したいな、という想いを今日もこの福岡のどこかでぶつけたいなと思います。



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