2016年からスタートし、2030年までをゴールとしている「誰一人取り残さない」ための人類の生存戦略SDGs。今年2018年は、後半に差し掛かって加速度がついたかのように広がりを見せています。
一般の人が目にするあらゆるメディアがこの「SDGs」という言葉を取り上げはじめており、感度の高い人は「ピンバッジ」をスーツやジャケットの胸に付けていたりを目撃するようになりました。(僕は毎日持ち歩くリュックにピンバッジを付けています)
大企業ほどSDGsを経営に盛り込みだした2018年
リクルートをはじめ、名だたる企業はSDGsを何かしら「経営」に盛り込みはじめています。理由は『ESG投資』(※)。とくに世界展開をしていたり、海外の(とくにヨーロッパ系の)投資会社から資金が入っている企業は、資金を引き揚げられるリスクもあるため取り組まざるを得ません。すでに日本の電力会社5社は、石炭を燃料に使用していることから世界第2位の投資会社から資金を引き揚げられたそうです。
※ESG投資:財務情報だけではなく、企業の環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に関する取組も考慮した投資。
あのスターバックスコーヒーやマクドナルドが、プラスチックストローを全廃したり、ヨーロッパの自動車メーカーがガソリン車をいずれ廃止する決定を発表したのも、お金の流れが変わったことがとても大きいのです。
とは言え、日本の経産省が2018年11月末にようやく「SDGs経営/ESG投資の研究会」を発足させたばかりで、大企業の多くがまだまだ「自社のCSRがSDGsの何番に符号するかのマッチングをしただけ」のところも見受けられます。
そして、福岡の七社会と呼ばれる「九州電力・西部ガス・福岡銀行・西日本シティ銀行・九電工・JR九州・西日本鉄道」各社のHPに、SDGsがどのように扱われているかを調べてみたのですが、まだ残念な状況でした。
(九電・西部ガスはCSRとして扱い、JR九州は環境活動報告書にキーワード的に記載、残り4社は検索してもゼロ件のヒットでした)
中小企業こそSDGsを経営に実装すべき理由
大企業は「世界のお金の流れ」から、投資会社や株主との関係で経営に実装しようという動きが広がりつつありますが、上場すらしていない中小企業にいたっては「興味ない」空気が漂っています。
今年10月に、関東経済産業局が管内11都県(関東8都県+長野・静岡・新潟)の中小企業約500社に聞いたところ、「SDGsについて全く知らない」が84.2%だったそうな。その多くが「自分たちには関係ない」って思っているそうです。
※出典:SDGs、知っている中小企業はわずか1割!(日刊工業新聞)
ということは、経営指針や戦略にSDGsを実装し、公表までしている中小企業は他社をいっきに出し抜くことができます。理由は以下の3点。
1.企業理念を「社会的使命」に沿って明確にできること
2.世界のビジネスの潮流に乗れること
3.自社ブランディングに繋がること
とくに今は少子化の流れもあり、年々中小企業ほど「人材獲得」の難易度が上がっています。「3.自社ブランディングに繋がること」において、経営指針・戦略にSDGsが実装されるだけで、「世界の潮流をよく知り」「持続可能な視点を持ち」、そしてなにより「企業の社会的使命と自分の価値観を合致させることができる」人材にとって魅力的な企業になります。
この、企業が持つ社会的使命と、自分の価値観が合わさっている人材って責任感や使命感が違いますよね。何より「SDGsを経営指針・戦略に実装させる」ということは企業理念をはじめ「うちの会社は、このような社会的使命により、こんなことをやっていく!」と社内外に明言したことになり、社員たちも何のために働いているか?のコミットメントの度合いが確実に変わります。
こちらにも事例含めて詳細を書いてます
経営指針にSDGsを実装するために必要なこと
経営指針や戦略、組織の理念などにSDGsを実装するには、「運用原則」になることが理想だと思っています。組織としての運用原則になっていれば、いざ経営者やマネジメント層が不在のタイミングでも、些細なことでも、判断基準が明確化されるため、組織としての意思統一がとてもスムーズになるからです。余計な確認待ち、指示待ちがかなり減ります。
それと、そもそもSDGsを社長1人や経営陣だけが知っていても、社員が知らない・不勉強のままであったら「また上の人たちが絵空事を言ってるよ」と社員たちは自分事になりません。よって、社員1人1人が、このSDGsが「地球における人類の生存がかかった戦略」であることを理解はしなくても、納得しておく必要性もあるでしょう。
なんなら、「どうすれば、企業がアウトプットする成果物が社会にインパクトを与え、その影響によりSDGsな世界を目指せるのか?」を、経営陣だけでなく、社員と一緒に考えたり対話したりする場を持つことで、社員1人1人が所属している企業が目指す方向を再認識し、自分が仕事を通して社会貢献できることを実感するという「機会」を得ることもできます。
なので下記のようなものが必要になってくると思います。
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社長だけ、経営陣だけでなく、社員も一緒に対話する機会がある
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対話を通して経営指針などが明文化される流れがある
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組織としての行動・運用原則の言葉ができる
というのを、最近いくつかの中小企業の経営層の方に話したら「とても共感します。うちの社長に時間作らせますので、話してください」「SDGsはよくわかってないけど、経営指針&戦略づくりを社員も一緒に考えながら明文化するところを手伝ってほしい」などの相談に発展しています。(見事にSDGsが仕事になってきた!)
福岡テンジン大学もSDGsを運用原則にインストールします
はい、僕が学長を務め、経営もしている弱小NPOの福岡テンジン大学ですが、グランドビジョンとして「福岡を世界でいちばん魅力的なまちにする」という言葉を掲げて8年間やってきました。ここには主語がないので、関わるみんながという認識を持ちやすく運用原則たりえたのですが、「持続可能なまちづくり」感がないのと、「いちばん魅力的」という表現が抽象的なだけに、時代によって意味合いが変わりすぎることがあとからわかってきました。
何より、福岡市は高島市長の登場により、リアルに「世界でいちばん」とまではいかなくても「アジアでいちばん」にはグッと近づいてきてる感があるので、福岡テンジン大学が掲げてきたこの「福岡を世界でいちばん魅力的なまちにする」は、創業期からのコアメンバーも変わってきたことを踏まえ、変えどきかなとこの2年ほど思ってて手を付けられていませんでした。
何より、福岡テンジン大学のボランティアスタッフたちは意識が高すぎるのか、SDGsの認知度は2018年の7月時点で70%あり、9月・10月に立て続けにSDGs授業もしたことにより、火が付いた人もいます。忘年会で「福岡テンジン大学の活動自体がSDGsみたいにできないですか~」と語り合ってる数名がいて、なんてステキな人が勝手に育つコミュニティだろうと感心しました。
こんなところが、高島市長の著書「福岡市を経営する」に、人づくりをしているコミュニティとして福岡テンジン大学の名前が登場する理由なのでしょうか。ということで、2019年は福岡テンジン大学にSDGsを実装させます!