ツタエルドボク

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今から2年前、6月30日の出来事です。まだ未開通だった福岡都市高速のとある箇所で、テンジン大学の授業を開催しました。そのときの写真です。

 

どんな授業だったかというと・・・

今では環状化して総延長56キロとなった福岡都市高速ですが、一周できませんでした。最後の未開通区間が福岡市西区の福重交差点上でした。開通してしまえば、2度と一般市民が歩くことができないというこの場所を教室に、テンジン大学の授業が企画されたのです。なぜそもそもこのような授業が開催されたのか?

 

福岡都市高速はここ最近、不祥事でおとなしくしておりますが(笑)ちょうどこの授業が開催される半年ほど前、「都市高速は広報部がない。だけど開通してしまったら今後、大きな良いニュースがない。いったい市民とどうやってコミュニケーションしたらいいんだろうか?」という相談をいただき、コラボレートという形で実現した企画です。その後、不祥事もありマイナスな大きいニュースが起きてしまったのですが。

 

このような街のインフラ、いわゆる道路や橋や高速道路を作っている会社、土木系の会社にはあまり広報の概念がありません。その必要性がなかったからですね。しかし、今後「良いニュースを打ち出す機会がなくなる」ということは、市民に都市高速の存在を、印象を、良い意味で伝える機会が自然的に発生する機会を失う、ということです。広報の概念がないということは、広報部なんてありません。広報を担当する担当者もいません。ということは、メディアとの上手な付き合い方もコミュニケーションの仕方も、ノウハウが蓄積されない、ということでもあります。

 

ツタエルドボク

福岡で開催され、主に九州北部から土木系の方々が集まり、「土木をどうやって伝えよう?」ということを考える分科会に、ツタエルプロが4人所属しています。1人は電通九州の人、1人はとある新聞社の記者、1人はテレビの番組・CMを作っている制作の人、そして僕です。これらのメンバーで、「土木をどうやって伝えよう?」というワークショップを複数年度・複数回にわたり進めています。

 

とある新聞社の記者さんがプチ講義したのですが、毎日山のように送られてくるプレスリリースと呼ばれる「記者さん、これを記事で取り上げてください!」のペラ1枚の企画書(主にFAXで送られてくる)ですが、1週間分の束の中で、土木系の会社から来ているものは「1枚もなかった」そうです。

 

そうです、土木系の会社には、そもそも社会インフラを発注するお役所さんがいて(国や県などの自治体)、それを入札で請け負う親会社がいて、その下に下請け各社がいて・・・という構図のため、市民への説明責任を国や県や自治体が背負っていたこともあり、広報の概念がなかったのです。そしてそれで良かったのです。

 

なぜ伝える必要が?

時は1972年、田中角栄内閣のときに始まった列島改造ブーム、ここより日本全国にくまなく立派な道路が敷かれ、インフラがどんどん整っていきました。それとともに国や各自治体の予算が組まれ、それを請け負う会社はどんどん大きくなり、下請け・孫請けと業界が大きく育っていったようです。しかし、35年後の2007年に人口は減少に転じ、地方は高齢化が深刻化、インフラは「管理・維持」のための莫大な予算がかかる、なかばお荷物的なところも出てきたのです。

 

追い打ちをかけたのは阪神大震災と東北大震災。免震・耐震ということで、ここ福岡でも都市高速が「管理・維持」の予算を増額せざるを得ず(とくに海沿いのため塩害がとてもヒドイらしい・・・)、無料化の予定年度を8年延長することになったのです。そして、料金所のおじさんたちの飲酒発覚。市民にとってはマイナスな印象で、批判の嵐になってしまうような悪いニュースも、実は「広報部」をしっかり設けて、リスクマネジメントをしている大手の会社は多いのです。記者会見のマニュアルから、社長のスピーチのレクチャーなど、指導してくれるPR会社も関東には存在しているくらいです。

 

そしてもう一つ、1972年以降の列島改造ブームがもたらした莫大な土木系を潤わせた予算は、これまた多くの人材が必要でした。そのため、全国各地の「理系大学」はこぞって土木の学部・学科を設置したのです。ですが、現在は土木と聞くと、やれ談合や、やれ不祥事や、のマイナスのイメージもあり、予算もどんどん縮小するため、人気のない業界になり、土木系の会社の人口ピラミッドの年齢構成はとてもいびつなものになっています。僕と同い年(今年33歳)で、土木系の会社にいる友人は、課長が3人で係長1人に係員である自分が1人で、部下がいない、と不思議なことを言っていましたが、終身雇用の年功序列の男性社会であるがゆえに、このような完全に狂った人事になってしまっている会社も多く存在します。

 

そうです、この業界にはあまりにも「ツタエル」ことが下手なのです。

 

それに危機感を感じた人・会社はすでに動き出しています。広報部をつくり、社外広報誌をつくったり、女性を採用したり、イベントを企画したり。土木学会も100年を迎え、とてもおもしろいことをやっています。ただ、この動きが関東・関西は活発なのですが、ここ九州ではぜーんぜん!!

参考:土木学会「100周年特設サイト」 

 

都市高速が想い出になる

そこで2年前に企画したのが冒頭の授業。都市高速という場を、テンジン大学がコーディネートし、ニュース性の高い授業を行う。ちなみにこの授業は新聞社2社に詳しく記事が掲載されました。さらにこの授業を開催する前に、「大人のアスレチック」と称して、福岡市内で一番高く大きな橋である都市高速の荒津大橋の鉄塔(地上90m)のてっぺんに登る!という授業もやりました。これはTNCのニュースに5分間ほどの特集になって報道されました。

▼テンジン大学授業レポート:

[大人のアスレチック]未体験ゾーンへようこそ。福岡一高い橋に登ろう!

 

 

このように、伝え方はいろいろありますが、動き始めています。ただ、本当にまだまだ少数派です。多くの土木系の会社では、残り数年で退職逃げ切りの管理職が数多く存在していて、40代前半以下で、危機感持っている少数派の方々は、動かない上を見てグチグチと言っていたりします。あ、ちなみに30代・20代が圧倒的に人口が少ないため、会社では下っ端扱いされ、このようなツタエルドボクには絶対に参加できないポジションだったりして、業界的に新しい風を吹かせることが本当にたいへんな状況がわかります。

 

福岡打ち水大作戦がヒント?

そんなツタエルドボクに参加している方々でも知っているのが「福岡打ち水大作戦」。なぜかというと、福岡県内の各地の自治体で開催され、その担当部署が福岡の場合、なぜか「河川課」。環境系ではないんです。その理由は、「打ち水」発案者の九州大学の島谷先生が河川の専門家ということもあるようです。博多駅近くにある第二合同庁舎、国交省でも毎年打ち水をしています。福岡県庁でも、河川課が打ち水をしています。そのため、福岡の土木系の会社の人は打ち水を知ってる人が比較的多いのです。

※前記事「どこよりも詳しい福岡打ち水大作戦」(2014.7.29)

 

そうです、今では勝手に各地で開催され、「打ち水」という言葉がどんな意味なのか、わかる人がたくさーんいますよね。この状況を土木で作れないか?というのです。良い印象として土木が伝わっていく・・・。そのために、土木業界はちょっとずつ結束力を高めつつあります。

 

日本の土木は、世界を驚かせています。それは高い技術力だけでなく、インフラとそれを回すオペレーションが一緒になったとき、世界の人々は「日本人には敵わない」と驚愕するそうです。そんな人材が多く育った日本。業界は今、東北大震災後の復興予算もあり、ありえないほどの「人材不足」に悩まされています。ここ福岡でも、LINEの支社ビルの建設が着工できないほど、影響が出ているくらいです。

 

今このタイミングで始まったツタエルドボク。僕は日本の歴史の中からおもしろみを見つけました。日本書紀があらわれる700年代よりまだ数世紀前、福岡県宗像市にある「宗像大社」の場所、海上60kmかなたにある沖ノ島の沖津宮から、大島の中津宮、そしてその2社を直線で繋いだ延長線上にあるのが宗像大社。当時、歴史書すらなかった日本に、海上60km先という目に見えない島から直線につないで正確に場所を特定していた日本人に、高い土木技術があったことは想像するのに難しくありません。

 

同じ福岡県内の大野城にある「水城(みずき)」も、600年代の国を挙げた巨大土木事業でした。いにしえより続く高い土木技術。これらを一般の人でも楽しく触れることができるツアーイベントなどあれば、それこそドボクの印象は少しずつ変わるでしょう。

 

おまけ

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画像引用:筑後川流域クロスロード協議会HPより

 

佐賀県鳥栖市にある「鳥栖JCT(ジャンクション)」、日本のジャンクションマニアでは非常に評価の高いジャンクションです。日本で唯一の完全クローバー型のカタチをしていて、かつ禁断のUターンができるという・・・(笑)確かにキレイな形をしていますよね!それだけ広大な土地があったからこそ作ることができたそうです。これも九州が誇るものの一つですね!


岩永真一(福岡テンジン大学・学長)への講師・講演依頼について

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