地域・まちづくり

駐輪場経営で持続可能なまちづくりを!~まちづくり駐輪場構想~

日本の主要都市、おそらく人口30万人以上いるような都市では鉄道の主要駅があり、そこを拠点として都市が開発されていることと思います。ここ福岡市は人口150万人を超え、天神や博多という都心部に多くのビジネス的拠点とショッピングの消費地が集約されているため、「自転車で来街する人口」もまた多いのです。

 

街の迷惑モノ!それが自転車

国内の政令指定都市だけを見ても、福岡市ほど起伏が少なく、天神・博多のような都心部を中心になるように交通網が整備され、住宅街が広がりをみせるような都市は少ないです。そんな福岡市では「自転車」が主な交通手段になっている人も多くいます。そんな福岡の天神では長らく「違法駐輪・放置自転車」に手を焼いてきました。違法駐輪・放置自転車のエリア内台数で日本一を天神も博多も獲得したという不名誉な歴史もあるほど。

 

そんな福岡市は2004年くらいだったか、他都市に先駆けて禁断な聖域(?)を駐輪場にすることで、この解決をはかります。路上、いわゆる歩道上に駐輪機を設置して駐輪場にしてしまうという事業です。天神地区には4,000台近い市営路上駐輪場ができ、10年ほどかけて「違法駐輪・放置自転車」はほぼなくなった!としています。

 

なんだ!解決してるやん!と思いますが、福岡市の7区の主要駅をはじめとする「違法駐輪・放置自転車」が多いエリアで、税金を使って「撤去」して、各区ごとに管理をしていること。指定管理により市営駐輪場を運営していること。これらの支出が年間11億円かかっているのです。

 

駐輪場の利用料などの収入は?もちろんありますが、年間9億円ほど。支出と差し引き約2億円の赤字を福岡市は「自転車」によって垂れ流しています。そんなこともあって、多くの自治体にとって「自転車は迷惑モノ」な見方で、自治体内にある部署の名前も「自転車対策課」だったりします。

 

さらに多くの人口が多い都市の主要駅周辺は、それはそれは不動産としての価値も高いエリアで、多くの鉄道会社やディベロッパーがカッコイイイラストイメージをもとにビルを建てていますが、やはりエリアとして駐輪場が足りていないと「違法駐輪・放置自転車」が増えてしまう。さらに交通事業者にとって自転車は収益を奪う敵でもあるため、なるべく排除しようという意識が働きます。ようするに、自転車って「いち個人としてはエコで運動にもなる便利な乗り物」なんですが、人間が下りてしまうと「置き場に困る景観を壊す迷惑モノ」なんです。

 

天神の駐輪場は稼げる不動産!

ところが!ここ福岡市の天神地区は自転車でのアクセスが最高によく、20分以内のエリアにワンルームマンションも非常に多く、「自転車通勤」の人口もかなりいると思われます。そこにショッピングや遊び目的で流入する自転車もあり、平日も休日も便利な駐輪場は満車な時間帯が長く、何回転もする駐輪エリアもあるほど。福岡市に数多くある市営駐輪のエリアでも、ここ天神は「自治体がやっても黒字なエリア」だそうです。(つまり博多含む他のエリアは赤字)

 

ということは、民間が工夫してやる駐輪場は「稼げる」ということ。そう!天神地区の駐輪場経営は、うまくやれば不動産として稼げるエリアでもあるのです。もちろん博多も自転車多いので、自治体ではなく民間がやってるところは黒字かもしれません。

 

もう1つ、構造的に「自治体が駐輪場を設置する場合は、駐輪機を定価で購入」になるため、なおさら民間が工夫してやれば初期投資をおさえつつ黒字化しやすいとも聞きました。だからか?天神地区には見えないところでビルオーナーなんかが小さな「有料駐輪場」を設置しているところもあったり、自分の土地で駐輪場運営会社に委託して、家賃などの形で収益を上げていたりします。

 

そう、天神は「迷惑モノ」な自転車が、なんと「利益を上げるお客様」でもあったのです!ってほとんどの人が知らないし、福岡市役所もながらくそう思っていなかった。一部の駐輪場経営の会社だけが、そのうま味を味わっていたエリアなのです。

 

利益をまちづくりに還元する仕組みができるはず!

もともと天神のエリアマネジメントに2006年から関わってきて、毎年「自主事業で稼ぐことをやらないと、いつまでも税金の補てんでは続かない」って議論があるはずなんですが、なかなか確立できていませんでした。そんなときに「駐輪場経営で利益を上げて、その利益をまちのために使い、持続可能なまちづくりをする」という小さな事例を北九州で見つけました。

 

NPO法人タウンモービルネットワーク北九州です。理事長の植木さんと何度も意見交換し、天神地区でその仕組みができないかの検討も行い、各所にその話を持ち込んでみたところ・・・

 

●現在の市営駐輪場を、民設民営に切り替えるのが手続き的にけっこうたいへんそう

●道路の管轄は本来は警察で、福岡市は警察の許可をとって駐輪場を設置した

●福岡市の条例で市営駐輪場の利用料金が定められていて、市営駐輪機は金額が変えられない

 

などのハードルにぶちあたり、難航しています。なぜこれらが壁になるのか?理由は、自転車は、というか自転車に乗る人は「目的地に近い便利なところに止めたい」という心理があり、大きな消費地・職場があるビルの横や、駅の横などが自転車が集中します。その場所の駐輪場が市営であるがために、周辺の民間駐輪場も同額以下の金額設定しかできず、「稼ぎにくい」構造になっているということ。

 

まとめると

【現状】天神地区で市営・民間合わせて約6,000台分の駐輪場がある
〇市営駐輪場:1日50円、3時間無料。ほぼ満車。(警固公園地下など)
〇路上駐輪場:1回100円。故障などもあり1日の稼働率70%前後。
〇民間[施設型]駐輪場:1日100円、2時間無料など。
〇民間[屋外]駐輪場:6時間100円、2時間無料など。

 

これを下記のようにするだけ

●福岡市条例から「1日100円」の規定を無くす (一番ハードルが高い)
●市営を辞めて、民設民営による路上駐輪場の運営管理(エリアマネジメントの特例にする)
(民間・商業施設の駐輪場も委託で運営管理などができるとなお良い)
●便利な路上駐輪場を6時間100円・2時間無料にすると、通勤者は少し遠い1日100円のところに止めたり、商業施設の1日100円のところに止める(現商業施設の稼働率アップ)

 

そうすると想定として

⇒来街者の「止められないから止める」が減り、違法駐輪が減る。

⇒初期投資はかかるが、1,000台以上の運営ができれば初年度より利益確保でき、5年後の債務償還後は膨大な利益が発生しはじめる。

⇒違法駐輪が減り「巡回人員配備」で、自転車の軽犯罪が減る。

★上がる利益をまちのソフト事業や景観を整える事業、コミュニティ活性化や社会実験事業にも使え、税金にまったく頼らなくてよくなる!

 

と駐輪場経営のプロや、中央区・福岡市の方の意見を取り入れつつ想定することができるのです。さらに 行政・県警と協議でき、大義名分もあるエリアマネジメント団体が経営するのが理想と思うのです。

 

で、実際には福岡の天神・博多のエリアマネジメント団体は、それぞれ西鉄・JR九州という鉄道事業者がやっているので「自転車」はやっぱり迷惑モノの意識・・・。ということで、この構想はほぼ受け入れてもらえていません(笑)

 

でも、ようやく福岡市役所の方がこの構想により「自転車対策の予算、というか赤字」を減らせる可能性を感じて、少しずつ動きがあるようです!引き続き、福岡が、天神が、より持続可能なまちづくりができるよう、一歩一歩動いていきたいと思います。



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