福岡でのワークショップの波

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「祭りと住みよいまちづくり」という難しいテーマでの講演依頼をもらいました。福岡市西区にある、糸島市との境目にある住宅街と田園風景と、九州大学伊都キャンパスがそびえるエリア“元岡”。その元岡小学校がある校区で、秋に「豊年まつり」という花火大会と稲刈りを終えた田んぼで、どろんこになって何か?を競い合うイベントなどがセットになったお祭りが開催されます。

 

 

その豊年まつりの開催に向けて実行委員会が組織され、会議を重ねていきます。その中で、第2回実行委員会会議に呼ばれまして、上に挙げたテーマでの講演を依頼されました。講演と言っても、実は中身は「ワールドカフェ」的なものをしてコミュニケーションを活性化し、祭りのさらなる向上や、委員のモチベーション向上に繋げたい、という依頼で、約70名ほどで講話+ワールドカフェをやりました。

 

 

北九州市の社会福祉協議会からも

7月半ばのまた別の日、北九州市の公民館の館長研修会でも「ワールドカフェ」を取り入れたコミュニケーション研修でした。

※前記事「館長から地域コーディネーターへ」(2014/7/30)

 

 

そのご縁もありまして、今年11月末に北九州市社会福祉協議会のボランティア大学校という生涯学習の講座の中で、リーダー養成講座の講師をすることになりました。こちらでも、「ワークショップ」を取り入れた研修を、と。

 

 

ワークショップを入れた学びの場づくり

最近、僕が講演やワールドカフェを含むワークショップの現場や、大学生たちに向けて講義をする際に、必ず示していることがあります。それは「ラーニングピラミッド」です。産業能率大学のHPに掲載されているイラストがたいへんキレイでわかりやすいので、勝手ながら引用させていただく代わりに、リンクを貼っておきます。

 

14-0806アクティブラーニング

90分間、ただ座って先生の話を聴いているだけの授業は楽しいでしょうか?多くの人はそんな授業には苦痛を感じるはずです。そして、聴いただけの知識はあまり身に付かないという調査結果もあります。

 

アメリカのでの研究結果を基に作成されたラーニングピラミッドと呼ばれる図は、授業で学んだ知識が半年後にどれだけ定着しているかを測定したものですが、受け身で講義を聴いただけでは5%しか定着しません。それが、グループ討論を行うと50%に高まり、さらに他の人に教えると90%もの内容が定着するという結果が示されています。

 

このような能動的な学びを「アクティブラーニング」といいます。

引用:産業能率大学「アクティブラーニングとは」

 

 

これを知る前から、テンジン大学を立ち上げた2010年より、授業を企画する中でワークショップ的な「参加者同士が能動的に対話をし、気づきを生み出し、学びを深める」というのを真剣に考え、いろんな試行錯誤をしてきました。そのため、一方通行で話をするより、答えを言わずに対話を進めて自分たちで答えにたどり着く方が、遥かに学習効果が高く、モチベーションが上がり、その後の行動まで変わることが、なんとなく感覚知として掴めていましたので、この「アクティブラーニング」という言葉と出会っても「やっぱりね」という感じです。

 

 

講演会の時代はもはや終わった?

月に一度、北九州まなびとESDステーションにてゼミと題したワークショップを開催しているのですが、そこに参加している大学2年の男子学生が「大学の授業より全然おもしろい」とボソっと言っていました。ワークショップというか、このアクティブラーニングの考え方に基づいて、しっかり対話の時間を設計することで、学びが一気に深くなります。

 

 

でもこのワークショップ型の講義や講演って、実はまだまだ少数派。大学の講義もほとんどは90分間、先生が話して板書しているようなものが多いのが実状です。ましてや、各地域や自治体が開催する講演会や生涯学習の講座などもその域を抜けられていないものがほとんど。

 

 

しかしながら、「それでは人は学んでないし、育たない」というのがわかってきたんでしょうか?ワークショップ型の講演や研修の相談が確実に増えています。そして本日も言われました、「最近はワークショップ型のものが増えてきてますね」と。

 

 

さらに日本の中堅大学の先生方もたいへん悩んでいます。大学の先生の勉強会にも何度か参加し、日本全国の大学でワークショップ型の研修サービスを提供している会社の方々ともお話すると、やはり従来のやり方では大学生たちの学びの速度が遅く、受動的な人ばかりで、能動的な学びになっていない、という嘆きと、それに対する対処法がワークショップを取り入れた対話型でした。

 

 

高額な有料の講演会はどうなる?

ワークショップ型の講座や研修で、しっかりとアクティブラーニングを取り入れて設計されたものが、学びが深く、次のアクションに結びつきやすいことがどんどんわかり始め、広がりを見せている中でも、ちょっとした有名人を遠くから呼び、数万円もする会費とともに講演会として一方通行の内容になっているものもまだまだ存在します。なぜなら「儲かるから」。

 

 

しかしながら、ワークショップ型の場合、講演内容はあくまで材料提供に過ぎず、その後のワークショップをまわすファシリテーターの方が重要になってきます。しかし告知の段階では、講演をする人に焦点を当てないと集客が難しかったりします。さらにこれが有料となるともっと難しい。お金を払う参加者としては、「何にお金を払うのか」という心理的な部分が、参加後の心に大きな影響を及ぼすのです。参加者は「自分の成長・学び」にお金を払うのか?答えは否です。

 

 

人が講座・研修にお金を払うとき「提供してもらえるサービスはどんな内容か?」という等価交換を無意識に意識しています、残念ながら。そのため、著名人が来たり、優良と思われる内容のことをしゃべってもらう、という部分にお金の等価価値を見出すのです。しかし、上に書いたように、一方通行の講義では、ラーニングピラミッドでは底辺のわずか5%です。

 

 

「儲かるから」という経済的理由で、参加者を上手に誘い込み、あまり結果の出ない方法で高額な有料の講座やセミナーが開かれる・・・。本当に人を育てたいと思っている人にとっては、これを知ると疑問しか出てきませんが、徐々にワークショップの効能が広がりつつあるようで、この有料セミナーの市場はこれからも拡大するとは思いません。

 

 

えっ?高額な金額を出しただけの価値がある?

 

 

人間の心理的に、「高額なモノは良い」という心理があったり、実際にお金を出した分「これは良いものだ」という錯覚が起きるともいいます。むしろ、有料セミナーの場合は、この錯覚を上手に演出したものが多いですね。やたらと満足度だけを上げるようなものもあると聞きます。(ここは最近は、自分では行ってないのでなんとも言えませんが)

 

 

福岡でも広がるワークショップ

今回、西区の元岡校区では、話題提供として「祭りと住みよいまちづくり」の講話を10分ほど。中身はなぜか、物理学を。量子が、実は人と人とのコミュニケーションや意識に関係しているのではないか?という世界の最新の研究があるのを、ここで紹介しました。その話題提供を持って、本題である「豊年まつり」を自分たちなりにどうしていくか、というのを出し合う、語り合う、というものにしました。

 

 

大都会福岡市とは言えども、西区のはずれ、お隣はすぐ糸島市の田園風景広がるところ。兼業農家も多いが、新興住宅地も多く、住民は増えているそうです。今回、実行委員会でもはじめてこのようなワークショップ(ワールドカフェ)を取り入れたそうですが、終わったあとの交流会のさらに2次会で、何名かから「やって良かった、新しいアイデア・意見も出てきたし、あの人があんなこと考えてる、というのがわかった」という声をいただきました。

 

 

このワークショップ型の対話の場は、地域では必須になってくると思いますが、1点悩ましい課題もあります。60代以上の男性は、この「対話の場」が想像以上に苦手なようです。だってそんな教育を受けてきていないし、それなりに地位や名誉を得た経験を持ってる男性ほど、自分の肩書きが意味をなさない場での初めて会う人とのコミュニケーションが、本当に下手なのです。かわいそうなくらいに。ときにはこのような男性が「場を壊す」ということもあった、というのを聞いたこともあります。

 

 

この60代以上男性が過半数を超える場では、ワークショップを上手に進行するのに、たいへん気を使いますし、熟練した技術がいる、と僕は思っています。そこで重要になってくるのがアイスブレイク。このアイスブレイクという名の、ワークショップの準備体操次第で、この比較的対話が苦手な方々(とくに高齢男性)が、どこまでしっかりついてきて対話ができるかどうかが決まる、というのをここ最近ようやく掴めてきました。ちゃんとコツみたいなのがあるようです。

 

 

アイスブレイクは、漫才で言う「つかみ」。最初にすべると、やはりその後もすべりやすい状況になってしまいます。こんなファシリテーションのスキルを持った人が、実は福岡にはまだまだ少数というのもどうやら事実のようです。ファシリテーターとしての技術を教えてくれる人や講座はたまに見かけますが、残念ながら「実践の場がない」人がものすごく多いというのが実態です。

 

 

でもテンジン大学は、授業を企画した人がファシリテーターとして場をまわさなければいけない、という実践の場です。ファシリテーションは見て学びます(笑)でも実践があるから、スキルはグングン伸びるようです。だって、僕は誰からもファシリテーションを学んでいませんが、人がやっているのを見て、実践をしてきただけです。

 

 

これもアクティブラーニングですね!

実践型の学びの場をもっと広げて、もっとファシリテーターも増やしたい。そうすることで、福岡から、より学ぶ人・行動起こす人が出てくるという仮説をもとに、これからもワークショップの波を起こしていきたいと思います。


岩永真一(福岡テンジン大学・学長)への講師・講演依頼について

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